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WTO貿易円滑化ルールの早期策定を求める
添付資料


【資料第1】WTOにおける貿易円滑化ルールの検討状況

  1. 貿易円滑化について、WTOにおいては1996年のシンガポール閣僚会議以来、検討が進められている#1

  2. 新ラウンド交渉が立ち上がったドーハ閣僚会議では、貿易円滑化を含めたシンガポール・イシュー四分野について、カンクン閣僚会議で明確なコンセンサスの下に交渉が開始されることが決定された#2。これを受けて、物品理事会において検討作業が続けられたものの、カンクン閣僚会議においては、交渉開始には至らなかった。

  3. 2003年12月のWTO一般理事会において、カスティーヨ一般理事会議長は、2004年の早い時期に各交渉グループにおける作業を再開すること、シンガポール・イシューは四分野を切り離した上で、貿易円滑化については、最終的な結果を予断することなく、引き続き交渉のモダリティの検討を継続することを提案した。これを受けて、事務局長及び事務局次長のイニシアチブの下でモダリティに関する技術的な議論が進められることとなった。

  4. 2004年1月にゼーリック米国通商代表部代表は、WTO加盟国の通商担当閣僚に送付した書簡において、貿易円滑化については交渉に向けて合意ができるのではないかと述べた。

  5. 2004年2月に開催されたWTO一般理事会において、一般理事会等の議長人事が決した。これを受けて、新ラウンド交渉全体のモメンタムが高まり、貿易円滑化ルール策定に向けてもプラスの影響があることが期待されている。

1シンガポール閣僚宣言パラグラフ 21
「我々は、以下に合意する。…貿易の円滑化の分野におけるWTOのルールの範囲を評価するため、貿易の手続の簡素化について、他の関連する国際機関の作業を参考にして調査及び分析の作業を行うよう物品理事会に指示すること」
2ドーハ閣僚宣言パラグラフ 27
「…我々は、第5回閣僚会議の後に、右会議における明確なコンセンサスによる交渉形態に関する決定を基礎として、交渉が行われることに合意する。第5回閣僚会議までの間、物品理事会は1994年ガット第5条、第8条及び第10条の関連する側面を再検討し、適切な場合には、明確化、さらには改善するとともに、加盟国、とりわけ開発途上国及び後発開発国の貿易円滑化のニーズ及び優先課題を特定する…」

【資料第2】わが国経済界が抱える貿易障壁例

わが国経済界は、以下のような貿易障壁を強く認識している。WTO貿易円滑化ルールにおいては、これらを改善することに主眼が置かれるべきである。(以下は、2003年11月から12月にかけて日本経団連関係委員会会員を対象に行ったアンケート調査の結果、並びに貿易・投資円滑化ビジネス協議会による「各国・地域の貿易・投資上の問題点と要望(2003年12月)」等に基づく)

1.ガット第5条関連

(1) 税関手続の簡易化

2.ガット第8条関連

(1) 国際標準・文書の利用

(2) データ・文書請求の簡易化

(3) IT利用の慫慂

3.ガット第10条関連

(1) 情報の入手可能性の向上

(2) 法令規則の施行前最低準備期間の設定

(3) 異議申立手続の実効性向上


【資料第3】貿易円滑化に関する他の会議体等の取り組み

1.アジア太平洋経済協力(APEC)

貿易・投資の円滑化は、貿易・投資の自由化及び経済協力と並んで活動の3本柱の一つである。

1995年には、貿易投資委員会の下部組織として税関手続小委員会が設立され、税関手続の調和・簡素化のための「共同行動計画」の実施や途上国に対する技術支援を中心に活動が進められている。

2001年6月の貿易担当大臣会合においては、加盟国が貿易円滑化に向けた自主的な取り組みを進める上での指針となる「貿易円滑化に関するAPEC原則」を承認した。この原則は、貿易関連手続における透明性の向上、基準の調和、新技術の活用等を内容としている。2001年10月の首脳会議では、上記原則を実施し、2006年までにAPEC域内における取引費用を5%削減することを目指すことが盛り込まれた「上海アコード」を採択した。

2002年10月の首脳・閣僚会議では、貿易円滑化のために実施すべき具体的な行動及び措置となる「Menu of Actions and Measures」が策定され、これらで構成される「APEC貿易円滑化行動計画」が承認された。

なお、APECビジネス諮問委員会(ABAC)は、2003年のAPEC首脳への提言において、貿易円滑化行動計画の着実な実施や、WTOにおける貿易円滑化ルールの策定交渉の開始等を求めている。

2.アジア欧州会合(ASEM)

1997年の第1回首脳会議において「貿易円滑化行動計画」が合意され、1998年の第2回首脳会議において承認された。同計画では、アジアと欧州の貿易の円滑化を図るための7つの優先分野((1)税関手続、(2)基準・認証、(3)政府調達、(4)検疫、(5)知的財産権、(6)ビジネスマンの移動、(7)その他貿易活動(流通等):現在は電子商取引が加わり8分野)を定め、それぞれの分野について具体的な目標を設けている。

3.世界税関機構(WCO)

WCOは、各国の関税制度の調和・統一及びそのための技術協力を推進することにより国際貿易の発展に貢献することを目的として設立された国際機関である。(1)HS条約や京都規約等、品目分類や税関手続等に関する条約の作成、(2)関税評価協定や原産地規則協定等のWTO関連協定にかかわる技術的検討、(3)密輸情報取締等の地域情報連絡、テロ対策などの監視・取締に関する国際協力、(4)条約の実施を推進するための関税技術協力(地域セミナー、専門家派遣)を行っている。

1973年には、税関手続の簡易化及び調和に関する国際規約である京都規約を採択した。1999年には、情報技術やリスク分析の活用による検査対象の絞込み等の近代的な税関手続を積極的に取り入れた改正案が採択された。改正京都規約は、締約国のうち40カ国が受諾することにより発効するが、2003年11月現在、受諾国はわが国を含めて14カ国である。改正京都規約のポイントは、(1)税関手続の近代化、(2)税関手続の調和化、(3)税関手続の透明化、(4)税関手続の迅速化の4点について国際標準を定めたことである。



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