2004年2月10日 (社)日本経済団体連合会 経済法規委員会 企業会計部会 |
日本経団連では、2004年2月10日、国際会計基準委員会財団(IASCF)の定款見直し作業(※)に対するコメントを提出した。IASCFでは、現行の定款において、5年毎にその見直しが必要と規定されていることを受け、2004年2月11日を締め切りとして、パブリック・コメントを募集していた。
IASCFは、ロンドンを本拠とする国際会計基準審議会(IASB)の運営母体であり、19名で構成される評議員会(Trustees)で運営されている(うち日本からは橋本徹氏、田近耕次氏の2名が参加)。IASBは、公共の利益に資する、高品質で単一の、透明かつ比較可能な財務諸表を作成するための世界的な会計基準の開発を目的としている。
経団連からは、IASBが真の国際機関として、世界中で適用可能な会計基準の設定主体となるよう、定款見直しにあたっての具体策を提言した。その要旨は下記の通りである。
IASBの目的は、「理解可能かつ実施可能な、高品質で単一の」会計基準の開発であるとされているが、その検討にあたっては、実体経済や市場で現実に行なわれている実務を十分に重視すべきであり、「市場関係者に受け容れられる会計基準を開発」する旨を定款上で明記すべきである。
現状の地域別の分布という枠組みに加え、主要な資本市場の代表が参加する構成とすべきである。IASCFが世界で認められる組織となるためには、世界の主要な資本市場の実態を考慮する必要がある。また、会計基準の国際的な収斂を効率的に進めるためには、主要な資本市場で現行に機能している制度や経験に基づいた知見を踏まえて議論に貢献できる人材の確保が有用である。
長期的に安定した組織運営を達成するためには、原則として、市場参加者全員から広く薄く負担する仕組みを確立すべきである。
現時点において、世界中からIASBへの批判が出ていることを真摯に受け止め、ガバナンスの改善が必要である。例えば、下記の具体策が考えられる。
世界で受け容れられる基準を作成するためには、メンバー構成が偏るべきではなく(例:特定の国からの出身者が全体の25%超の議席を占めない)、主要資本市場(例:日米欧)の代表が参画すべきである。
また、定款上で定められている「公式のリエゾン責任」の位置付けや選任手続が明確でなく、メンバーが個人として参加するには権限と責任の両面で限界がある。したがって、「公式のリエゾン責任」の定義を明確にした上で、各国との連携を強化して議論を進めた方が、会計基準の収斂というIASBの目的を達成するためには、より効率的である。
市場関係者からは、これまでのIASBの基準開発手続が、定款上で定められたプロセスを表面的に実施するのみで、真摯な対応に欠けているのではないかという強い不満が出されている。そのため、例えば下記のような具体的なデュー・プロセスの強化が必要である。
議論を効率的に進めるべく、現状の50人体制(49人の委員+オブザーバー)から、いくつかのグループ分け(例:(1)新興経済圏・中小企業の基準を別途検討する機関、(2)市場関係者や金融監督当局で構成される基準設定諮問機関)を行い、人数を絞り込むべきである。
また、現状で兼職となっているIASBとSACの議長は、それぞれの役割及び立場を考慮して、相互に独立すべきである。
※ 現行のIASCFの定款では、Trusteesが全体の組織及びその有効性のレビューを本定款が施行(2001年2月6日施行)されてから3年後(2004年)に遂行し、パブリック・コメント手続を経て合意された定款の変更があれば、それを5年後(2006年)に施行することを定めている。また、同様のレビューを、以後5年毎に行うこととしている。そこで、Trusteesでは、7名の評議員(Trustee)で構成される検討委員会を内部に設置し、幅広い定款見直しの検討を行うこととしている。
(和文) | 国際会計基準委員会財団(IASC Foundation)定款の見直しに関するコメント |
(英文) |
Comments concerning the Review of the Constitution of the International Accounting Standards Committee Foundation |