2003年11月14日 (社)日本経済団体連合会 情報通信委員会 国際問題部会 |
今や情報通信技術は経済社会の様々な活動に不可欠なツールとなっている。情報通信技術の特質は、距離や時間の制約から実現が困難と思われてきた目的を達成し新たな価値の創造を可能にすることにある。人々の生活をより便利で豊かなものとし、産業を活性化し、持続的な経済成長を遂げるためには、このような特質を十分に活かす必要がある。日本を含めた多数の国・地域において情報通信技術戦略(e-strategies)が策定、遂行されているのは、情報通信技術のそのような戦略的重要性が認識されている証左に他ならない。
また、個人や企業、NGOの活動が国境を超えて世界の隅々まで広がる今日、至る所で情報通信技術を利用できる環境が求められている。その実現に向けた取組みは、基礎的な情報通信インフラが不足する国・地域の人々の生活環境を改善することにも寄与しよう。
このような中、来る12月10日から12日にかけてジュネーブで開催される世界情報社会サミット(WSIS:World Summit on the Information Society [http://www.itu.int/wsis/] )では、デジタル・デバイド解消のためのe-strategyとも呼ぶべき宣言と行動計画を採択することになっている。情報通信技術によるコミュニケーションの深化は国・地域の間の距離を縮め相互理解を容易にすると同時に、文化的な多様性を促しもする。各国首脳が、実現可能なビジョンを共有し、文化的な多様性を尊重するとともに、国際機関等による既存の取組みとの重複を避けながら、民間部門、市民社会はじめ関係者の意見を踏まえて、下記を実現するための具体的な施策に合意することによって、民間部門の創意工夫を生かした自由な活動を軸とする情報社会の実現に向け着実な一歩を踏み出すことを期待する。
民間部門による情報通信インフラへの投資、情報通信技術の開発などを促すため、競争促進的、技術中立的な政策を展開する。また、ユビキタスネットワーク環境を実現し、情報や知識へのアクセスを改善するため、電波の有効利用と利用周波数帯の国際的な調和を推進する。
情報や知識の自由かつ円滑な流通を促すため、WTO交渉において、情報通信技術を利用したサービスや人の移動の自由化を強力に推進する。
政府の規制ではなく、民間部門の自立、自助、自己責任に基づいた取組みによって利用者の信頼を確保するため、全ての参加主体に「セキュリティ文化(a culture of security)」を根づかせ、取引や手続の重要性に応じて適切な対策がとられるよう、奨励する。
技術進歩など絶え間ない環境変化に迅速かつ適切に対応するため、インターネットの運用管理は、政府間組織ではなく、引き続き民間国際組織のリーダーシップに拠ることを支持する。
経済社会の様々な活動において情報通信技術の需要を喚起するため、電子政府の推進など政府自ら率先して情報通信技術を活用する。また、公的分野における情報通信技術の活用を推進する。
デジタル・デバイドをデジタル・オポチュニティに転換し、途上国の生活環境を改善するため、医療、教育などの分野における既存の国際協力スキームにおいて、ブロードバンドネットワークなど情報通信技術を利用することによって限られた人的、財政的資源を有効活用する。