[ 日本経団連 ] [ 意見書 ]

個人情報の保護に関する法律施行令(案)の概要に対するコメント

2003年10月24日
(社)日本経済団体連合会
情報通信委員会情報化部会

先の通常国会における個人情報保護法(以下「法」と記す)の成立を受け、各企業・団体は、今まさに情報資産の整理を行うとともに、法に規定された義務を履行すべく、体制整備を進めているところである。そのような取り組みを円滑かつ確実に行うためには、法の施行のための政令および法第7条に規定する基本方針の早期制定はもとより、主務官庁による速やかな対応方針の提示、ならびに適時適切な情報提供が不可欠である。
また、法に基づく省庁ガイドライン等や地方公共団体の条例等によって義務の程度、内容が異なる場合、企業にとってその負担は決して軽くないと懸念されることから、主務官庁相互および国・地方間の連絡・協力を密にし、無用の混乱が生ずることのないよう配慮されたい。
以下、今般公表された個人情報の保護に関する法律施行令(案)の概要についてコメントする。

※ http://www5.cao.go.jp/seikatsu/kojin/seireian.pdf

1.個人情報データベース等(法第2条第2項第2号関係)

いわゆるマニュアル処理情報としての「個人情報データベース等」が「これに含まれる個人情報を一定の規則に従って整理することにより特定の個人情報を容易に検索することができるように体系的に構成した情報の集合物であって、目次、索引その他検索を容易にするためのものを有するもの」と定められているが、この定義によれば、例えば電話帳が「個人情報データベース等」に該当し、そこに記載された個人情報が少なくとも「個人データ」(法第2条第4項)として、法第19条〜23条の保護の対象となってしまう。したがって、「ただし、公開された情報の集合物は除く」旨の記述を加えることによって、電話帳等の公開された情報の集合物が「個人情報データベース等」から明確に除外されるよう措置されたい。この点に関して、平成15年4月8日の衆議院本会議において小泉総理大臣より、「電話帳を単に参照する場合など、個人の権利利益を害するおそれが少ない場合は規律の対象としないことを検討している」旨の答弁があり、5月6日付の内閣答弁書においても、「電話帳は、法案第二条第二項第二号に基づく政令において、個人情報データベース等に含めない方向で検討している」と記されている。
なお、法第2条第2項第1号で規定されているコンピュータ処理情報については政令委任されていないため、今回のパブリック・コメントの対象ではないが、現行の規定では、市販のカーナビソフトのように公開されたものであっても「個人情報を含む情報の集合物」として「個人情報データベース等」に該当することになり、そこに含まれる個人情報が少なくとも「個人データ」として、法第19条〜23条の保護の対象となってしまうという、上述のマニュアル処理情報と同様の問題があることを指摘しておきたい。

2.個人情報取扱事業者から除外されるもの(法第2条第3項第4号関係)

市販のカーナビソフト等を購入してそのまま利用する者を個人情報取扱事業者(以下「取扱事業者」と記す)から除外する趣旨には賛成である。他方、例えばカーナビソフトの中には、次回以降使用する際の便宜のために、利用の履歴を自動的に記録する機能を有するものがあり、施行令(案)では、そのような機能を持ったカーナビソフトを事業活動に利用する者が、「個人情報取扱事業者」に該当する恐れがある。したがって、「これを編集し、又は加工することなく」に替えて、「これを個人の属性に係る他の情報と結合することなく」との記述を加えられたい。なお、平成15年4月24日の衆議院個人情報の保護に関する特別委員会において、細田個人情報保護特命担当大臣(当時)より、「政府案第二条第三項第四号に基づき制定される政令に、例えば、氏名、住所、電話番号のみの個人情報を他の個人の属性に関する情報と結合せずに取り扱う者を含める方向で検討をしたい」旨の答弁があった。

3.保有個人データから除外されるものの消去までの期間(法第2条第5項関係)

法第2条第5項では、「1年以内」の政令で定める期間以内に消去することとなるものは保有個人データから除外されるとされているが、施行令(案)において、消去までの期間を「6月」としたことについて、その理由を明らかにされたい。

4.個人情報取扱事業者が保有個人データを開示する方法(法第25条第1項関係)

取扱事業者が保有個人データを開示する方法として、書面の交付に加えて「開示の求めを行った者が同意した方法があるときは、当該方法とする」とされているが、電話、電子メールなど電子的方式、および磁気的方式による開示も、その対象に含まれる旨を明記されたい。
また、開示の求めを行った者だけでなく、取扱事業者の同意も必要とすることによって、情報の性質に応じて適切な方法が選択されるよう措置されたい。
なお、開示の求めを行った者から開示の方法について特に指定がなく、取扱事業者が提示した方法に対して開示の求めを行った者が異議をとどめなかった場合には、「同意」したものとみなすことが可能と考えるが、この際確認しておきたい。

5.開示等の求めをすることができる代理人(法第29条第3項関係)

保有個人データの開示等の求めをすることができる代理人として、「開示等の求めをすることにつき本人が委任した代理人」が含まれているが、本人の個人情報が第三者に漏洩するリスクを低減する観点から、代理人の範囲について、各取扱事業者が任意に定められるよう措置されたい。

6.その他

「12.その他」で、「その他所要の規定を設けるものとする」とされているが、具体的にどのような規定を想定しているのか、明らかにされたい。仮に規定を設ける場合には、法の実施に必要最小限のものにとどめるべきである。

以上

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