総合的なADRの制度基盤の整備についての意見募集について 司法制度改革推進本部事務局 http://www.kantei.go.jp/jp/singi/sihou/pc/0729comment_a.html |
2003年9月1日 (社)日本経済団体連合会 経済法規委員会 企画部会 |
わが国経済社会の複雑化、高度化に応じて紛争の多様化が進むものと予想され、ADRを活用してこれらの紛争に対し迅速かつ柔軟な解決が図られることに期待が寄せられている。そこで、ADRが、国民にとって裁判と並ぶ魅力的な選択肢となるよう、ADRに関する基本法(以下、基本法)が立法化されることは極めて重要であると考える。基本法も含めて、ADRの総合的な制度基盤の整備が図られることを、経済界としても歓迎するものである。
その際、多様な紛争解決ニーズに対応し、迅速かつ低コストで柔軟な対応が可能となるよう、法規制を行なうとしても最小限とすることで制度設計についての自由度を高め、多様なADR機関の存在が可能となることで、利用者の自由な選択の幅が広がることが望ましい。
また、既存の民間業界支援型の各種ADR団体は、これまで、様々な紛争解決に積極的な役割を果たし、消費者から一定の支持・評価を得てきていることを踏まえ、基本法の立法化がこれらの活動を阻害することなく、むしろ、その活動が活発に行なわれうるようにすることが必要である。
なお、「総合的なADRの制度基盤の整備について」における各論点について、意見は下記の通りである。
ADR制度の普及を図るためには、利用者である一般の人々の立場から設計し、信頼され、安心して利用できるものとしなければならない。そのためには、国・地方行政機関が、ADR機関の自主的活動を尊重し、これを阻害しない範囲で支援・監督等の施策を講じたり、反社会的勢力のADR制度への関わりの排除を図ったりする必要がある。
ADR機関の主宰者について、「公正な手続運営が確保されるように努めなければならない」とすることが妥当と考えるが、これに関連し、論点14における「公正性又は独立性に疑いを生じさせるおそれ」との記述について、注17の趣旨に賛同し、「独立性」の文言は不要と考える。
また、「主宰者」はその手続運営において、適正な証明責任の配分、手続日程の管理を行なうことが肝要であり、これらが当事者の責において遵守されない場合は、手続を終了(申立の却下、一方のみの主張に基づく裁決、訴訟への移行等)させるといったことも考えられるのではないか。
これまでADR手続の利用が低調であった原因には、どのような紛争をどの機関に持ち込めばどのように解決を図ることができるかという情報が、国民に広く知られていないことが考えられる。従って、国民のADR制度の利用を促すためには、ADR機関及び相談機関自らも積極的に情報提供を行なうことが求められることから、ADR機関、相談機関ともに、努力義務を課すことについて賛成する。
相談手続は、電話等を通じて、簡易に、また、短期間で終了するものもあるので、説明義務を課する場合は、実務上の混乱を招かないようにすべきである。
迅速かつ柔軟な紛争解決というADR本来の趣旨に鑑みれば、情報の利用制限を例外として、現時点で一般的なルールを設けることは適当でない。
仮に、何らかのルールを設ける場合は、当事者間の合意や個々のADR機関の規則等でルールを修正しうることを明確化しておくべきである。
時効の中断に関する特例に関しては、訴訟提起時の遡及的発効、時効停止・催告との関係の議論等、一定の要件・効果の更なる検討が必要と考えるが、当面は、論点20−(2)「ADRの申立をした者が、ADR終了前又は終了後、一定期間内(例えば、30日以内)にADRの目的となった請求について訴えを提起したこと」とする案が優れているように思う。仮に、特例を設ける場合、「ADRの適格性に関する要件」を設けることは適当でないと考える。
ADR和解に執行力を付与することに反対ではないが、ニーズは限定的かと思われる。これを付与する場合は、例外的に強い「適格性」が求められると考えられ、そうした仕組みを設けることが、かえってADR活動を阻害する懸念がある。
ADRと裁判手続を連携させることにより、ADRにおいても裁判手続と同様の厳格な手続が求められることになれば、ADR本来の趣旨である迅速かつ柔軟な紛争解決が阻害されることから、特例は不要と考える。
裁判所の利用者は、裁判所による裁断を求めて訴訟を行なっている場合が多いという実態を鑑みれば、裁判所によるADRを利用した和解勧奨ができる旨の明確化は不要と考える。
また、訴訟に準じた証拠調べ等の手続を整備することは、簡易かつ迅速な手続で紛争を解決するというADR本来の目的と相反することから、当事者の合意がない限りは、ADRに訴訟に準じた手続を持ち込むべきではないと考える。
司法へのアクセスの拡充に資するという観点からは、民事法律扶助の対象を民事裁判に先立つものに限定することなく、ADRにおいても扶助を行なっても良いのではないか。
ADR主宰者に関し、反社会勢力と関係する者を排除する一方で、弁護士以外の実績のある専門職が活動できるようにする措置がとられることが望ましい。
「ADRの適格性に関する要件」及びその確認方法については、ADRの特長であり、また、国民にとっての利点である迅速かつ柔軟な紛争解決の促進を阻害しないよう最大限配慮すべきである。