2003年7月31日 (社)日本経済団体連合会 経済法規委員会 企画部会 |
不動産登記法の改正について示された標記担当者骨子案については、その改正の方向性について概ね賛成する。今後さらに登記の利便性を向上させつつ、真実性、信頼性の向上に配慮した検討を期待する。
以下は、現段階で特にコメントを要すると認めた部分である。
コメント提出先のアドレス(法務省)
http://www.moj.go.jp/PUBLIC/MINJI34/pub_minji34.html
電子情報処理組織を使用する方法と窓口や郵送で申請書を提出する方法との受付の先後関係については、合理的かつ明確な基準を設けるべきである。特に日本郵政公社や民間事業者による多様な郵送手段などとの関係、システムが不具合を起こした場合の受付時間の決定等の対応等について明示すべきである。
登記所の閉庁時間後に「オンライン登記申請配信・受付管理システム」に配信された申請、窓口に送付された申請について、受付の先後関係は先に配信・送付されたものを優先とすべきである。
出頭主義の撤廃については、出頭主義のメリットである即日補正の代替措置を講じてほしい。
出頭主義を廃止する前提として、即日補正に関する代替措置や、後述の本人確認制度などにより、登記の真実性が失われないような措置が十分に講じられることが必要である。
登記識別情報については、他者による悪用などがなされないよう技術的な検討をすべきである。
現行制度では債務者が勝手に担保物を売却しないように、抵当権者が登記済証を保管することが行われている。登記識別情報制度への移行をした場合には、登記済証の担っていた機能に代替させる措置として、登記事項の変動が生じた場合には、抵当権者等の権利者、所有権者に対する通知の仕組みを設けるべきである。
登録申請代理人による本人確認手続と申請者自身による本人確認手続とを比較した際に、両者が同程度の簡便なものとなるようにすべきである。少なくとも、申請者自身による本人確認手続が、登録申請代理人による手続より不便となることがないようにすべきである。特に法人による申請が代表取締役でなければできないといったことがないような措置を講じるべきである。
登記官による申請人の確認についての具体的な審査については、恣意性を極力排除し、利便性の向上と登記の真実性を確保するために妥当な方法を検討すべきである。いかなる場合に出頭や情報提供が求められるのか、提供が求められる「必要な情報」とはどのようなものか、明示すべきである。
申請書副本による代替制度の廃止については慎重に検討すべきである。少なくとも登記原因証明情報には、現在、原因証書として広く用いられている売渡証書(当事者双方から委任を受けた司法書士が作成し、売買代金額・当事者の押印等は必要とされない)を利用できるようにするなど、申請人の負担を増やさないようにすべきである。
同一の不動産に関する登記所に提供された前後が明らかでない数個の申請は、登記所で同時に提供されたとみなされるが、受付時間の管理を徹底し、極力、先後関係を明らかにすべきである。
不動産登記法をひらがな口語体の法文に改めることに賛成である。平易な表現となるよう努めるべきである。
申請書など関係書面については、その簡素化(漢数字の多角文字[壱、弐等]をアラビア数字に改める等)・合理化を図るべきである。
予告登記の意義は乏しく、廃止には賛成である。
登記官の過誤による職権での更生手続および登記完了後になされた審査請求について理由があると認められる場合の是正手続を整備することに賛成である。
不動産登記(例えば所有権移転の場合)において、登記義務者の本店所在地に(当該不動産取得に際しての登記時点から)変更があった場合で、本店所在地と当該不動産所在地の法務局管轄が異なる場合には「変更証明書」の添付が必要とされている(不動産登記法43条1項)が、これを不要とすべきである。
現状登記義務(権利)者の本店所在地と取引対象不動産の所在地を同じ法務局が管轄する場合には、当該法務局に商業登記簿もあるため、当該登記義務(権利)者の印鑑証明書・資格証明書は提出不要とされている(ただし、一部の法務局を除く)。この取扱いとの権衡において、オンライン化後も電子証明書の添付を不要とすべきである。
現行制度では、地役権の設定登記をする際に、地役権設定する土地(承役地)と要役地とで管轄法務局が異なる場合には、要役地の登記簿謄本を添付しなければならない(不動産登記法113条3項)。システムのオンライン化を進め、登記所側で、他の登記所が管轄する土地についても登記内容を確認できるようになるのであれば、要役地謄本の添付を廃止すべきである。
共同抵当の場合の抵当権設定登記(根抵当を含む)において、最初に抵当権設定を行う物件を所管する法務局で4/1000の登録免許税を支払えば、2回目以降を他の法務局で行うに際して登録免許税法施行規則11条に定める書類(前登記証明書[登記簿謄本]、ただし根抵当の場合はそれまでに抵当権を設定した全ての筆の謄本が必要)を提出すれば登録免許税が1500円になる制度がある(登録免許税法13条2項)。これについてもシステムのオンライン化により、2回目以降の法務局での申請に際し、証明書を不要とすべきである。