2003年6月16日 日本経団連 日本メキシコ経済委員会 |
日墨経済連携協定の政府間交渉は、昨年11月から開始され、5月にはメキシコにおいて、第3回首席代表レベル会合が行われるなど、交渉は本格化しつつある。
メキシコが30カ国以上の国と自由貿易協定(FTA)を締結しているなかで、FTA未締結国である日本の企業は、平均16%の関税はもとより、政府調達、投資等の面においても、欧米企業に対して、競争上不利な立場にたたされ、実害を被っている。FTAがないことによる損失額は、年間約4,000億円と推計(「経済関係強化のための日墨共同研究会報告書」)されており、日本からメキシコへの輸出総額約4,900億円に迫る巨額なものとなっている(数字はいずれも99年)。
政府調達では、入札価格の評価にあたって、メキシコ企業のFTA未締結国企業に対する10%のディスカウント制度があり、日本企業は不利な状況におかれている。さらに、5月1日に、フォックス大統領は、経済活性化プログラムを発表し、このなかで、政府調達における国際入札をメキシコ企業とFTA締結国企業に限定する方針を打出した。このため、日本企業が国際入札に参加できない状況が生じている。メキシコ国営石油公社(PEMEX)の総額16億ドルにのぼるミナティトラン製油所近代化の大型案件では、すでに最初のパッケージの入札において、日本企業が対象から除外された。また、今後のパッケージの入札においても、日本企業は対象から除外されると見られる。さらに、他のプロジェクトについても、こうした事態が拡大していく懸念が高まっている。このように、日本企業は、メキシコにおける大きなビジネスチャンスを失う厳しい局面にたたされている。
こうした状況を一刻も早く打開するため、日墨経済連携協定の早期締結が不可欠である。日墨経済連携協定は、シンガポールとの協定とは異なり、センシティブ分野の難しい交渉を含むという意味で、初めての本格的な協定といえる。今後、アジア諸国との協定交渉が控えていることを考えれば、その試金石にもなる。10月には、フォックス大統領の訪日が予定されており、そのときに両国政府間において、協定に関する合意を得るよう、政府間交渉が進むことを切望する。
【付属資料】
メキシコの政府調達において日本企業が入札に参加できない具体的事例