[ 日本経団連 ] [ 意見書 ]

総務省「電波有効利用政策研究会」最終報告書案に対する意見

2002年12月10日
(社)日本経済団体連合会
  情報通信委員会
  通信・放送政策部会

さる11月19日に公表された総務省の「電波有効利用政策研究会」最終報告書案(http://www.soumu.go.jp/s-news/2002/021119_3.htmlを参照。以下「最終報告書案」と記述)に対する当部会の意見は下記のとおりである。
なお、当部会では、電波の有効利用に関する考え方を改めて整理し、近く公表する予定である。

1.「第2編 電波の再配分方策 第1章 電波の再配分計画の策定と補償の要否」

【第1節 電波の再配分計画の策定手続】

利用状況の調査は、国、独立行政法人ならびに地方公共団体が運用する無線局を含め例外なく実施し、その結果の評価については、免許人が特定されないよう配意した上で公表することを原則とすべきである。なお、調査項目は、有効利用程度を評価する上で真に必要な項目に限定し、免許人、行政双方に過度の負担とならないようにすることが重要である。
調査結果に基づき有効利用の程度を評価する場合には、無線局の利用目的との相対関係に十分配意する必要がある。即ち、利用度が低いことが直ちに有効に使われていないという評価につながるわけではなく、利用度が利用目的に照らして十分かどうかが重要である。基本的には、企業が消費者にサービスを提供するために運用する無線局は、利用者数、情報伝送量などの定量的指標を中心に判断されることが望ましい。国や地方公共団体が国民の生命・財産の保護などの業務のために運用する無線局および企業が公共性の高い業務を円滑、安全かつ安定的に遂行するために運用する無線局については、定量的指標で有効利用の程度を判断することは適切でない場合もあることから、公共性など、定性的な観点をも踏まえた総合判断とならざるをえないと考える。また、利用目的にかかわらず、有効利用技術の採用の程度や割当当初と比較した場合の有効利用の進捗度も勘案すべきである。いずれにしても、有効利用程度の評価については、パブリックコメントを実施するなど、公正・透明な手続を経て確定すべきである。
有効利用の程度に関する評価を踏まえて、周波数割当計画の変更案を策定するにあたっては、その時点で実用可能な技術を十分考慮し、出来る限り共用の可能性を追求すべきである。その際、例えば、共用する場合には使用できる周波数を若干広げるなどのインセンティブを付与する方策も検討すべきである。また、有効利用程度を確定する場合と同様、パブリックコメントを複数回実施するなど、公正、透明な手続を確保すべきである。

【第4節 その他】

国や地方公共団体が運用する無線局についても、周波数帯の移行あるいは電波利用の終了の対象となりうるものと理解する。

2.「第2編 電波の再配分方策 第3章 給付金制度に係る費用負担のあり方」

【第3節 電波利用料】

電波利用料は、特定周波数変更対策業務などに使途が拡大される一方、利用料総額の約85%を携帯電話端末などの包括免許における特定無線局に依存するなど、受益と負担の関係が曖昧になっている。最終報告書案では、電波の再配分に必要とされる給付金の財源に電波利用料を充てることが検討されており、受益と負担の関係が改めて問われることになろう。また、電波利用料は無線局数を基に料額を算定するため、電波の有効利用を促進するような形とはなっていない。さらに、国および一定の独立行政法人については適用除外に、地方公共団体が開設する水防、消防および防災行政用の無線局については料額が減免されている。
これら現行制度が抱える問題を解決するための方策について検討する必要がある。

【第4節 免許を要しない無線局の費用負担のあり方】

再配分に伴い、既存免許人に損失が発生する場合の補償費用は、原則として新規免許人に一定の負担を求めるのが適当である。ただし、免許を要しない無線局へ再配分する場合に、同様に費用負担を求めることについては、緩やかな制約の下で発展してきた、それら無線局の普及に水を差す恐れがある上、費用徴収方法についても種々の課題があることから、慎重な対応が求められる。

3.「第3編 電波有効利用推進のための市場原理の活用方策」

今後、再配分等により電波を新たに割当てるにあたって、特に企業が消費者にサービスを提供するために運用する無線局については、同一周波数帯域で複数の利用ニーズが競合することが予想される。そのような状況に迅速かつ的確に対応するためには、免許方式の見直しが必要である。既に、携帯電話等の免許の競願処理手続として比較審査方式が導入されているところであるが、審査の透明性、公平性、客観性を担保する観点から、企業が消費者にサービスを提供するために運用する無線局であって、電波を専用する形態については、市場原理を取り入れた免許方式とすることが適当である。
市場原理を取り入れた免許方式としては、オークション方式や最終報告書案で提案されている「市場原理活用型比較審査方式」(従来の比較審査方式に人口カバー率などを新たな審査項目として取り入れた上で各審査項目を点数化し、その点数に基づいて免許人を決定する方式)などが考えられる。オークショ方式については、価格が高騰する、免許期間が長くなり、再配分が困難となる、使途が特定できない、といったデメリットがあり、導入に反対する意見がある。他方、それらのデメリットは制度の設計次第で是正可能であり、少なくとも将来の導入の可能性まで否定すべきではないとの意見もある。したがって、当面は、「市場原理活用型比較審査方式」による対応が妥当であり、方式の詳細について検討を深める必要がある。また、実際の運用にあたっては、比較審査項目と各項目毎の配点を事前に公表し、パブリックコメントを実施するとともに、得点を含めた審査結果を公表することによって、手続の透明性を確保すべきである。
なお、オークション方式は、引き続き中長期的な課題として検討する必要がある。

4.「第4編 電波有効利用推進のための技術的方策 第4節 電波有効利用技術の開発推進のための環境整備」

本年10月に公表した日本経団連の規制改革要望をも踏まえ、実験無線局の開設促進方策について検討を行い、「短期実験局」の特例措置を提言している点を評価する。この上は、最終報告書案にあるとおり、実際に免許手続の迅速化が図られることを期待する。
なお、「実験者や製造メーカ等の技術的能力を担保することにより、落成検査の省略の可能性を含め、技術基準への適合性確認手続きを簡素化・迅速化することについて検討を進めることが適当」としているが、これは、あくまで免許手続の簡素化・迅速化の方策の一つとして提案されているのであって、「短期実験局」の特例の適用を受けるための必要条件ではないと理解するが、その旨を明記することが望ましい。

以  上

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