現在、道路関係四公団民営化推進委員会(以下、「民営化推進委員会」)において、日本道路公団をはじめとする道路関係四公団の民営化のあり方について検討が続けられているが、産業界は高速自動車国道・一般有料道路・都市高速道路(以下、「高速道路」)のユーザーとして、議論の成り行きに注目している。
道路関係四公団の民営化の意義は、整備すべき路線の優先順位を明確にし、国の高速道路整備の重点化、効率化を進める契機となるとともに、特殊法人改革の一環として、その債務の返済を確実にするという点にある。
この観点から当会としては、民営化推進委員会が、今後の高速道路整備に係る建設コストを相当程度縮減する方向を打ち出していることや、建設主体の民営化・経営の自主性の確保と債務返済についての具体的なスキームを精力的に検討していることを高く評価している。最終的な取りまとめにあたっては、昨年、閣議で決定された基本方針に沿って意見が集約され、国民の理解が得られる答申がなされるよう期待する。
経済効果等の観点から必要な高速道路は着実に整備を進めること |
道路は、国民生活、産業活動にとって、必要不可欠な社会インフラである。民営化後の新会社(以下、「新会社」)は、既存債務の返済が確実に実行され、ネットワーク全体としての通行料金収入に基づく採算性が確保される限りは、積極的に高速道路整備の役割を担うべきである。新会社が自らの判断により引き受けない路線についても、経済効果の観点などから必要な高速道路は、国および地方の判断において、優先順位をつけ、着実に整備すべきである。その際、道路の規格の見直しを含め、徹底したコスト削減の努力をすべきことは言うまでもない。
例えば、首都圏中央連絡自動車道、東京外かく環状道路及び首都高の中央環状線の、いわゆる首都圏三環状道路の整備には、さらに多額の投資が必要となるが、都心部の600個所にものぼる慢性的な交通渋滞や沿道環境の悪化等を大幅に解消し、その経済効果は年間4兆円にものぼるとされている。国の都市再生本部においても、三環状道路の整備を都市再生プロジェクトとして決定したところであり、こうした経済的社会的に意義のある道路は着実に整備を進めるべきである。
既存債務の返済を着実に行うこと |
道路関係四公団の既存債務については、「特殊法人等整理合理化計画」に示された通り、50年の範囲内のできるだけ早期に返済することを基本とすべきである。
この債務返済を着実に行う観点からは、高速道路に係る固定資産税負担のみならず、法人税・法人事業税・法人住民税の税負担を最少化するような組織形態とする必要がある。その観点から、「保有・債務返済機構」を設置し、新会社から高速道路等の資産を分離するという考え方は妥当である。
なお、債務返済に係る国費の投入については、「特殊法人等整理合理化計画」に基づき、各公団ごとに検討すべきである。
通行料金を引下げること |
高速道路のユーザーである産業界として新会社に期待するのは、コスト意識の徹底が図られ、海外に比べて非常に高い通行料金の引下げも含めた利用者サービスの向上が図られることである。
しかし、高速道路の独占的利用権が認められる新会社の競争相手は、主に一般道路であるが、高速道路の質の高さからみて、高速道路は相当独占的な市場であるといえる。そのため、単に民営化するだけでは、通行料金引下げへの誘因が働かないということが懸念される。通行料金は、現行料金を上限とすべきである。
さらに、新会社は、管理コスト削減によって、通行料金をできる限り引下げ、それによる需要拡大を通じて採算性の向上に努めるべきである。