メキシコ国際企業連盟(COMCE)と日本経団連とは、2002年10月30日、メキシコシティにおいて、第25回日本メキシコ経済協議会を開催した。メキシコ側からは、ゴンサレス・サダ団長、フォックス大統領、デルベス経済大臣はじめ、約90名の官民の経済関係者が、また日本側からは、塙義一日本メキシコ経済委員長を団長とする約60名の企業関係者、政府関係オブザーバーが参加した。両代表団は、今次協議会において、両国の経済関係強化に資するものとして、日墨自由貿易協定(FTA)の重要性、効果、早期締結の必要性などについて議論した。
日墨自由貿易協定については、双方の代表団から、以下のような重要性、効果が強調された。
メキシコは、すでに多くの国々とFTAを締結し、北米、中南米、欧州との貿易・投資の活性化を図っている。こうしたFTA先進国としての経験を活かしつつ、新たに日墨FTAを締結することで、両国間の経済関係の更なる強化を図ることができる。
日本は、シンガポールとのFTAの締結を皮切りに、アジア、中南米諸国との自由貿易協定について、検討を開始している。メキシコにおいては、日墨FTAが存在しないことにより、日本企業が関税面だけでなく、政府調達、投資等の面においても、欧米企業に対して競争上不利な立場に立たされ、実害を被っている。この解決の鍵を握るのが日墨FTAである。産業界としては、日墨FTAの早期締結の必要性を従来から指摘しており、日墨FTAがシンガポールに続き、わが国にとって第二番目のFTAとなることを強く求めるところである。
グローバル化の進展のなかで、外資が持続的な活動を行うためには、他国に比べて魅力的なビジネス、投資環境が提供されなければならない。両国の産学官メンバーから成る「経済関係強化のための日墨共同研究会」が、7月にとりまとめた報告書でも指摘されている通り、モノやサービスの自由化だけでなく、ルール・制度の変更、労働問題、治安、規制緩和、環境など、広範な分野にわたるビジネス環境の整備が、両国にそれぞれ進出している企業の事業拡大、新たな企業の進出を促し、両国間の経済関係の強化、貿易・投資の促進を行うために不可欠である。また、メキシコの産業基盤ならびにインフラの整備のため、裾野産業の育成、日墨双方による制度的な金融支援が重要である。
メキシコは、企業の競争力強化に向けた本格的な取り組みを開始するとともに、電子分野において、ITAプラスという関税引き下げを実施した。こうした改善努力は評価できるものの、まだまだ十分ではない。たとえば、メキシコでは、2001年よりNAFTA向けマキラドーラ制度が変更され、代替措置としてPROSEC優遇税制が施行されるとともに、Regla Octava制度の適用もできることになったが、対象品目、適用関税率の突然の変更の可能性、煩雑な利用認可手続きなどの問題を抱えている。こうした制度の不安定性、予見困難性によって、撤退、規模縮小など大きな打撃を受けている日本企業も多く、生産拠点のアジアシフトなども生じており、対象品目の追加、手続きの簡素化など、制度の早急な見直しが必要である。また、メキシコに進出している日本企業は、マキラドーラ協会と連携して、こうした改善をメキシコ政府に働きかけている。
以上のような観点から、メキシコ側および日本側代表団は、先般のロスカボスにおけるAPEC会合に続いて行われた日墨首脳会談において、フォックス大統領と小泉総理大臣との間で、日墨FTAの政府間交渉開始の合意がなされたことを大いに歓迎、評価するとともに、日墨FTAが1年以内に、早期に締結されることを強く求める。また、日墨FTAは、上記のビジネス環境改善のための方策を包含した、できるだけ広範にわたる二国間経済連携強化のための協定となることを望む。これによって、両国間のビジネスが活発化し、互いの国が持つポテンシャルに相応しい、経済関係が構築されることを期待する。