2002年9月17日 (社)日本経済団体連合会 (社)日本在外企業協会 (社)日 本 貿 易 会 |
経済活動のグローバル化に伴い、我が国企業は世界的規模で事業活動を展開している。海外に長期滞在する民間企業関係者の数も年々増加しており、2001年には約31万人に達している。
我が国企業が海外の支社・支店、関連会社等に駐在のために社員を派遣する場合、欧米等の年金システムが整備されている国においては公的年金制度の適用が求められる。他方、我が国では海外駐在の間も厚生年金保険料の支払いを継続することが義務となっていることから、企業は保険料の二重払いを余儀なくされる。例えば、最も多く駐在員を派遣している米国に対しては、毎年約834億円もの保険料を支払っている。このような保険料の二重払いは、我が国企業に大きな負担となるばかりでなく、激化するグローバル・コンペティションの時代にあって国際競争力を減退させる要因の一つともなっている。
また、産業の空洞化の回避ならびに国内経済の活性化を実現する上で、我が国の対内直接投資を取り巻く環境の整備が緊急の課題となっている。社会保障協定の締結は、外国企業による対日直接投資のインセンティブとしても大いに期待されるところである。
我が国は、グローバルな経済活動の現状を踏まえ、米国をはじめとする先進諸国との社会保障協定を早急に締結すべきである。
米国は、2002年現在、欧州諸国を中心に19カ国と社会保障協定を結んでいる。
一方、我が国がこれまで締結した社会保障協定は、ドイツ(2000年発効)、イギリス(2001年発効)の僅か二カ国に過ぎない。日独社会保障協定によって年間約81億円、また日英社会保障協定によって年間約256億円の二重払いが回避できるようになったことは、極めて重要な前進として高く評価する。しかしながら、欧米企業に比して、我が国企業が多額の保険料の二重払いを余儀なくされており、国際競争上劣位の立場に置かれていることは否めない。特に、我が国企業が最も多く駐在員を派遣している米国との間で、未だ社会保障協定が実現していないことを深く憂慮している。
社会保障協定の締結を通じて、第一に二重払いの回避、第二に通算協定による保険料掛け捨て回避が実現することが望ましいが、我が国企業としては、保険料二重払いの現状が一刻も早く是正されることを要望する。
グローバル・コンペティションが激化する今日、国家は、国内経済の活性化をもたらす直接投資を促すため、企業にとって魅力的な国内制度の整備を進めるようになった。いわば、国家間の制度整備競争とも言われる現象が生じており、二国間の社会保障協定もこのような環境整備の一環といえる。
我が国産業界は、これまで社会保障協定について個々に要望してきたものの、充分な成果が上がっていない。社会保障協定は、我が国企業の競争力向上だけでなく、我が国経済の活性化を実現する上でも極めて重要であることを認識する必要がある。こうした考えに立ち、米国をはじめ、より多くの国と社会保障協定が早急に締結されることを強く要望する。
(注)諸外国(米国、ドイツ、イギリス、フランス、韓国、ベルギー)に対する年間の保険料支払額は、別添「資料」の統計に基づき、(社)日本在外企業協会が推計したものである。