2002年7月31日 (社)日本経済団体連合会 経済法規委員会 企業会計部会 |
検討が不十分なまま不完全な制度を2003年4月から義務付けることは拙速であり、反対である。四半期開示を制度化するためには、会計・監査基準の設定機関や作成者、市場関係者等の間で十分に議論・検討を尽くし、関係者の合意を得ることが必要である。
四半期情報を作成するためには、実務上は連結グループ全体で明確な基準に基づいたシステムを構築する必要があり、一度構築したシステムを変更するとなれば多大なコストが必要となる。したがって、制度の導入当初から明確な基準が設定されている必要がある。
「四半期業績の概況」として、各社の判断に基づく情報開示を求めているため、統一性に欠け、企業間比較が困難である。概況を記載するとしても、連結ベースでの会計データを持たなければ情報は出せない。例示されている情報では、数値の信頼性に疑問が発生する可能性があり、情報の有用性に欠ける。当面は現状通り自主開示とすべきである。なお、東証が提案している様式化については、制度会計情報としての財務情報の体裁となり相応しくない。
四半期報告制度は、現行の半期報告制度のあり方との関連も踏まえて、その枠組み作りの検討を進めるべきであり、検討に際しては、次の事項に留意すべきである。
財務情報は、連結対象範囲、外貨換算、有価証券及び棚卸資産の評価基準や評価方法、固定資産の減価償却や減損処理、売買取引の価格等の取扱いで数値が大きく変わるため、四半期の会計基準が整備されないまま四半期財務数値を開示することは投資家をミスリードする恐れが有る。
公認会計士や監査法人による関与又は保証のあり方に関しては、中間監査のあり方とともに検討すべきである。
また、不正や誤謬への対応あるいは相場操縦やインサイダー情報規制についても検討が必要であり、監督官庁との連携が必要である。
四半期決算を発表している欧米では、業績見通しを公表しないケースが多い。業績予想の公表で価格形成の公正性・円滑性に重要な影響が生ずるのであれば予測情報自体の開示に問題がある。従って、四半期開示情報を開示する場合は予測情報の開示を強制することに反対する。
なお、アクション・プログラムに「四半期財務情報の開示によってこの「業績予想」の開示が代替されるとの不正確な理解が一部に存在している」とあり、また、脚注10に米国では「ガイダンスと呼ばれる経営者の「業績予想」の開示を行う実務が広がりつつあります。」と書かれている。しかし、米国では訴訟等の問題から業績予想の開示は義務化されておらず、企業が開示する予想情報はTrend Information等の傾向に関する定性的な開示であり、売上げ、利益の予想数値の開示を求められているわけではない。予測情報について自主開示に委ねる場合でも、米国同様のセーフハーバールールの整備を同時に手当てすべきである。
開示項目は、国際的な開示レベルという点から連結ベースのみの必要最小限とすべきである。
(注) 上記は、東京証券取引所が6月27日に公表した「四半期財務情報の開示に関するアクション・プログラム」に関して、経済界としての考え方を取りまとめたものです。