[経団連] [意見書]

「会社更生法改正要綱試案」に対するコメント

− 法制審議会倒産法部会 会社更生法改正要綱試案(2002年3月1日)へのコメント −

2002年3月29日
(社)経済団体連合会
 経済法規専門部会

「会社更生法改正要綱試案」(2002年2月22日、法制審議会倒産法部会決定)は、会社更生手続を合理化し、手続の迅速性・柔軟性を重視する方向で取りまとめられており、その取り組みを高く評価する。
なお今回の意見照会は、対象となる範囲が広範また細部にわたるものであり、今回の機会に限らず、今後、議論の進行に応じて、国民各層の意見に耳を傾けていただくことを希望する。
当部会として、当面、特にコメントする点は以下の通りである。

総則関係

第1 更生事件の管轄及び移送
 賛成である。
 ただし、東京・大阪に申立てが集中した場合にも円滑な対応が可能となるよう、裁判所の要員の確保などを行なうべきである。

第2 職権送達規定の見直し
 賛成である。
 ただし、連絡先の特定方法などの整備を行なうべきである。

第5 監督行政庁に対する通知の見直し
 賛成である。
 なお、民事再生法規則第6条同様の官庁等への通知規定を整備する際には、関連法との整合性をはかり、手続を円滑に進める上で必要な監督行政庁には通知されることを確認したい。

第6 更生手続開始の登記等の廃止
 賛成である。

第8 更生手続開始前の牽連破産の場合における共益債権の財団債権化
 賛成である。
 ただし、一定の要件、限度額を設けた上で、租税債権など破産法47条各号の債権に優先する債権とすることも検討すべきである。

第9 事件に関する文書等の閲覧等
 賛成である。

更生手続の開始関係

第11 包括的禁止命令
 賛成である。
 ただし、「第14」における更生手続の開始要件の緩和により申立てが容易になる一方で、強力な禁止命令が設けられることになることから、その発令の要件は明確に定められるべきである。

第12 保全段階における中止した手続等の取消しの制度
 賛成である。
 ただし、中止した手続等の取消しに対する異議申立方法を整備すべきである。

第13 保全段階における商事留置権消滅請求
 賛成である。
 ただし、留置権の目的の価額の適正性をどのように担保するのかを明らかにすべきである。また、価額に争いある場合の「第33」同様の価額決定の制度を整備すべきである。

第14 更生手続開始の条件
 賛成である。
 本改正により、申立てから開始決定までの権利関係が不安定な期間を短縮し、手続全体の迅速化を図ることが期待される。

第16 労働組合・使用人代表の手続関与
 賛成である。
 ただし、労働組合、使用人代表に対して、注にあるような更生手続開始についての意見聴取等、手続関与の機会をさらに認めることについては、迅速な処理の観点からも問題があり、出資の限度で責任を負う株主等と比しても均衡を欠くため、反対である。

第18 営業の全部又は重要な一部の譲渡についての規律
 更生手続によらない営業の全部又は一部の譲渡の禁止をすること、これにかかわらず更生手続開始後、更生計画案認可前に、管財人が裁判所の許可を得て更生会社の営業の全部又は一部の譲渡をすることができるものとすることにつき賛成である。
 この際、株主に対する手続としては、甲乙のいずれかということでなく、より簡易、迅速なものとなるよう、その方法について検討すべきである。また、債権者、労働組合等に意見聴取の機会を与えることには賛成するが、適時の営業譲渡の機会を失わないよう、迅速な処理が求められる。

更生手続の機関関係

第21 管財人、管財人代理、保全管理人代理の選任
 賛成である。
 ただし、旧経営者を管財人に選任する場合は、「第37」の財産状況報告集会に際して、「第25」の監督委員の意見書等に基づき、管財人の選任についてその理由を明確にするとともに、「第37」の注にあるように財産状況報告集会を開催しないときには、旧経営者を管財人に選任する際にはその理由を示した上で、利害関係人が裁判所に対して一定期間内に意見を述べることができることとすべきである。

第24 保全段階における請求権の共益債権化
 賛成である。

第25 監督委員の意見書の提出
 賛成である。
 ただし「第21」を参照していただきたい。

更生債権、更生担保権等の各種の権利の取扱い関係

第27 更生計画によらない弁済の制度
 賛成である。

第31 担保権の実行禁止の一部解除
 裁判所が一部解除の許可を与えることについて賛成である。
 また、担保権の実行については競売によることなく任意売却も対象とすべきである。

第34 後順位担保権者の更生担保権確定訴訟の帰趨と更生担保権額
 乙案に賛成である。
 後順位抵当権者は、目的物の価額を自らの費用で争ったのであるから、その結果、生じた利得は自ら取得させるべきである。

第35 社債権者の手続参加
 賛成である。
 ただし、当該届出のあった社債を有する者がその有する社債の「債券の番号その他社債を特定するに足りる事項を裁判所に届け出る」こととしている点については、当該金額の社債を有していることを疎明する資料があればよいこととすべきである。
 理由は、公募社債の社債権者の大半は、証券会社その他の金融機関等に社債券を混蔵寄託しており、社債権者は当該種類の社債券に対し、金額に応じた共有持分を有するのみで、特定の記番号を付された社債券面に関する権利を有しているわけではない。届出を特定の社債券と結びつけるためには、寄託者が受寄者に対し、共有持分の分割(特定券面の返還ないし分別保管)を請求し、受寄者がそれに応じるという煩雑な手続を要することになるからである。

第36 代理委員
 賛成である。

第37 関係人集会
 賛成である。
 ただし「第21」を参照していただきたい。

第40 関係人委員会(仮称)
 賛成である。
 ただし、注1にある「より細分化された委員会は承認の対象としない」ということについては、株主においては種類株主の多様化が進んでいること、また預金保険機構、投資者保護基金、保険契約者保護機構のようにあらかじめ債権者の代理人としての権能が付されている者がいること、などを考えれば、承認を受ける主体については、より柔軟に認める余地があるのではないか。

更生会社の財産の調査及び確保関係

第42 財産評定及び更生担保権に係る担保権の目的の評価
 賛成である。
 ただし、時価概念の明確化に努めるべきである。
 なお、貸借対照表はあくまで更生会社の事業全体の価値を把握するための資料にすぎないことを明確にすべきである。
 一方、更生手続において従来より認められてきた、商法上の計算書類に将来収益等を基礎とした暖簾を計上することも、引き続き認められることを確認したい。

第43 担保権の目的である財産の特別な換価制度
 担保権の目的である財産の特別な換価制度を設けることには賛成である。
 なお、議決権はじめ更生担保権者の権能については、目的物を換価された後も実質的に変わるものでないことを確認したい。
 また、譲渡担保のような非典型担保に関する取扱いも明確にしておくべきである。

更生計画関係

第44 更生計画による更生債権等の弁済期間
 更生債権、更生担保権ともに弁済期間は原則12年程度とすべきである。

第50 更生計画案の可決要件
 更生計画案の可決要件を緩和することにつき賛成である。
 その上で、更生担保権の減免その他期限の猶予以外の方法によりその権利に影響を及ぼす定めをする更生計画案については議決権を行使できる更生担保権者の議決権の総額の「4分の3」以上に当たる議決権を有する者、清算的更生計画案については議決権を行使することができる更生担保権者の議決権の「5分の4」以上に当たる議決権を有する者の同意を得なければならないものとすべきである。

更生計画認可後の手続、更生手続の廃止関係

第52 更生手続の終結時期(終結要件)
 賛成である。
 ただし、履行がされることが確実であるかどうかの判断においては、履行の程度のみならず、利害関係人の意見聴取等を踏まえて判断すべきである。
以 上

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