わが国企業は、欧米企業との熾烈な競争にさらされている一方で、中国をはじめ、アジア諸国の急速な追い上げを受けており、わが国企業あるいは産業の競争力をいかに強化していくかが大変重要な課題となっている。
産業の競争力を強化していくためには、企業自らが、研究開発に投資し、付加価値の高い製品やサービスを生み出していくことが、何よりも求められるが、政府の政策や制度についても、企業の活力を最大限に引き出し、釈�蓿繙就�粮㏍芍��轣蛹≒鳫�笏蜿遐�竚癈鷭∂焜聨纃瘟赧漓�籬�㏍聽轣蛹就輝卦吟卦掩臼傑恭延⊂桿轣蛹Γ蔚飴頏阡繝�籟鹿畩を十分に発揮できるような環境の整備が必要と考える。
かかる観点から、経団連としては、国としての科学技術基盤の強化について、提言「科学技術戦略の変革に向けて」(2001年6月)を、産学官連携の推進について、「国際競争力強化に向けたわが国の産学官連携の推進」(2001年10月)を、取りまとめてきた。今般、その一環として、競争力と密接な関係がある知的財産政策のあり方についても、基本的な考え方をとりまとめることとした。
経団連としては、この考え方に沿って、引き続き検討を行なっていきたい。
わが国企業は、研究開発に投資して知的資産を創出し、事業戦略に適した知的財産権の取得、事業展開に適した知的財産権の活用を図りつつ、付加価値の高い製品・サービスを市場に提供することにより投資を回収し、収益を上げるべく活動を行なっている。企業としても、知的財産戦略を、経営戦略の重要な柱の一つとして捉えるとともに、政府においても企業の活力を引き出すような知的財産政策の推進が求められる。
先端技術分野においては、米国において保護対象の拡大や権利の付与が迅速に行なわれ、わが国は、この後追いを行なっていることが少なくない。科学技術基本計画で重点とされた4分野やイノベーションの速い分野における先端の技術で、わが国が世界をリードできる分野においては、世界に先駆けて保護対象の拡大や権利の設定を行なう必要がある。
また、わが国の権利行使の仕組みも、専門性や手続きなどの面で十分に活用しやすいものとなっていない。権利を尊重する風土を醸成するシステムの構築に向けて、例えば、知的財産権侵害に関する証拠収集手続きの拡充、侵害訴訟制度のさらなる強化を通じた損害賠償の充実、ライフサイクルの短い商品についての差止訴訟の迅速化、特許裁判の専属管轄化、裁判所における訴訟と特許庁における審判手続きの融合による紛争の一回的解決など、改革をさらに進めるべきである。
産学官連携にあたっては、知的財産権の取り扱いや機密保持などについて、大学と企業が十分な相互理解の下で、柔軟な交渉を行なうとともに、明確な内容の契約を事前に取り交わすようにすべきである。その前提として、知的財産権の帰属については、大学の研究者が発明したものは、原則として、適切な報奨のもとで組織としての大学に帰属させるべきである。また、独立法人化以前においても、産学官連携で生じた大学の研究者の成果について、大学が管理・処分を決定できるような措置を講じるべきである。
知的資産を核にして産業競争力を強化していくためには、わが国の科学技術基盤そのものの強化や、産学官の連携の推進が重要である。総合科学技術会議は、昨年1月の発足以来、分野別推進戦略の策定やそれに基づく予算の重点配分、産学官連携プロジェクトの中間まとめや産学官連携サミットの開催などに、積極的に取り組んでいる。 科学技術分野への予算の重点投資から得られた成果を権利化し、わが国経済の発展に生かしていくためには、これまでの取り組みを踏まえて、どのような特許権が得られているかを分析してテーマを選んだり、あらかじめ外国で特許を出願することを視野に入れて予算の手当てを行なったり、研究開発戦略と標準化戦略を一体化するなど、知的財産権の取得・活用戦略についての検討を加えることが必要である。 なお、知的財産権の取得・活用戦略は、分野ごと、さらには個別のテーマごとに状況が異なることから、その推進にあたっても、個別の事情への配慮が不可欠である。
事業を実施するのに数多くの特許権を必要とする機械・エレクトロニクス分野と、少数の特許権で事業が成り立つことがある化学・医薬分野では、事業戦略における知的財産の扱いや、知的財産に関する考え方に大きな差がある。さらには、デジタル化・ネットワーク化の進展の中で、著作権と産業との関わりも強まってきている。 また、先端技術分野においては、例えば、ライフサイエンスの分野では、医療と裁定実施権の問題、スクリーニング方法の特許の問題、医薬品に関するデータの保護、IT分野では、インターネットを利用した国境を越えた取引、標準と知的財産問題、ビジネスモデル特許、コンテンツの流通と権利保護のあり方など、個々に大変重要な課題を抱えている。 これらを、一律の知的財産政策で扱うには限界がある。少なくとも、ライフサイエンス、IT、環境、ナノテクノロジー・材料の重点4分野については、分野別の知的財産政策のあり方を検討すべきである。