環境省が先日公表した報告書「土壌環境保全対策の制度の在り方について」(中間取りまとめ)は、(1)調査の契機を事業場の廃止時や用途の変更時に限定している点、(2)すべての土地について一律の浄化を求めるものでないなど、評価できる点がある一方で、一律の環境基準等でリスク管理地か否かを判断するなど、論理的でない点も見られる。 産業界としては、土壌環境保全の制度化にあたり、さらに下記の点が反映されるよう強く要請する。
中間取りまとめでは、リスク管理地か否かを判断する基準として、一律の基準(汚染土壌の直接摂取による人の健康に対するリスクの管理が必要であると判断する基準については「土壌の含有量リスク評価検討会」報告の要措置レベル、地下水等への溶出による人の健康に対するリスクの管理が必要であると判断する基準については現行の土壌環境基準)を適用するとされている。しかし、これらの基準は、超過によって即健康に影響するものではないことから達成すべき目標値と位置付けられるべきであり、規制基準として用いられることには反対である。
汚染原因者が判明する場合には、土地所有者でなく汚染原因者にリスク低減措置をとらせるのが原則である。しかしながら、汚染原因となった行為の中には、過去は違法行為ではなかった例、行政が奨励して使用させた物質が汚染原因である例などもあることから、汚染原因者の免責事由や時効期間も法に規定すべきである。
また、自治体との間ですでに解決策について合意している汚染事例については、法の適用除外とすべきである。
土壌汚染対策の支援策として、事業者など関係者から拠出される基金を造成するという考えには断固反対する。汚染と因果連関のない第三者に負担を負わせること自体全く不合理であり、「負の遺産」の処理として説明のつくものにはならない。
リスクが高く、対応が早急に必要であると行政が判断する場合には、公費で当該対策費を負担するのが当然である。