[経団連] [意見書]

「電気通信事業分野における競争の促進に関する指針」(原案)に関する意見

2001年10月15日
(社)経済団体連合会
  情報通信委員会
   通信・放送政策部会

 経団連では、通信利用者の立場から、事前規制により事業運営の適正化を図る「事業(者)規制法」とも言うべき現行法を利用者利益の最大化のための自由かつ公正な競争の確保を目的とする「競争促進法」の体系へ早急に転換するよう関係各方面に働きかけてきた。昨年3月の「IT革命推進に向けた情報通信法制の再構築に関する第一次提言」では、その転換のための施策の一つとして、競争制限的行為の排除への公正取引委員会の積極的な関与を求めたところである。この点、今般、同委員会が、電気通信事業分野における独禁法の適用に関する考え方を明らかにしたことは、評価できる。また、電気通信事業法上問題となる行為が併せて示されたことによって、行政の透明性の一層の向上が期待されるところである。

 他方、原案には指針の意義・目的に照らして修正すべき点があり、また、指針の前提となる現行の電気通信法制自体が競争の促進という要請に必ずしも十分に対応できていないという基本的な問題が残されている。そこで、今次指針が競争促進にとって真に実効あるものとなるよう、以下を要望する。

1.「競争を一層促進する観点から事業者が採ることが望ましい行為」について

 指針の第一義的な目的は、原案 I 「指針の必要性と構成」にあるように、「独占禁止法及び電気通信事業法を適正に運用していく」ための行政の規準を明らかにすることにある。また、指針を有用なものとするには、「独占禁止法と電気通信事業法の適用関係をめぐる事業者の無用の混乱や負担を生じさせない」ようにすることも重要である。
 そのような観点からは、原案 II の「独占禁止法上又は電気通信事業法上問題となる行為」、即ち法律の発動要件を構成する行為を示すだけで十分である。III の「競争を一層促進する観点から事業者が採ることが望ましい行為」は行政指導的な意味を持ち、「問題となる行為」との間に却ってグレーゾーンを作り出す惧れがあると考える。

2.現行の電気通信法制について

 競争が導入された事業分野では、競争の一般的ルールである独占禁止法が厳正に執行されることが重要であり、将来的には、個別法を必要としない競争環境が実現されることが望ましい。しかしながら、原案が指摘する通り、電気通信事業分野には市場支配力を有する事業者が存在するなどの特殊性があること、また、同分野が依然として独占から競争への過渡期にあることに鑑みれば、現時点では、独占禁止法の厳正な執行に加えて、個別法により事業の特殊性に応じた必要最小限のルールを設け、競争を促進する必要性が認められる。
 以上の基本的な考え方に立てば、電気通信法制の要諦は、競争の促進を妨げている規制を速やかに撤廃し、事業運営を事業者の自己責任に委ねる一方、公正な競争を確保するためのルールを整備することである。そうすることによって、電気通信事業法が独占禁止法と共通の目的を追求する法制として位置づけられることになり、両者の適用関係をめぐって、事業者に「無用の混乱や負担」が生じないようになるものと考える。

3.独占禁止法の適用に当たっての考え方について

 原案は、I の第2の2「独占禁止法の適用に当たっての基本的考え方」にあるように、主に「電気通信役務市場」を中心とした行為について、独占禁止法の適用に関する考え方を明らかにしている。しかしながら、電気通信事業の関連・隣接分野を含めた情報通信市場においては、垂直・水平方向への事業形態の多様化など従来の枠組みにとらわれない様々な動きが見られる。このような中で、利用者利益の最大化のために公正な競争をいかにして確保していくかが問われている今日、広く情報通信市場において「問題となる行為」についても、独占禁止法の適用にあたっての考え方が明らかにされることが期待される。

以 上

日本語のホームページへ