企業組織再編成に係る法制、税制の整備により、企業グループを一体とするグループ連結経営が定着している。わが国企業の国際競争力を維持強化し、企業組織再編成による経済構造改革を促進する観点から、組織形態に対する課税の中立性を確保し、企業経営の一体性にふさわしい連結納税制度を平成14年度に確実に導入する必要がある。
現在、政府税制調査会の法人課税小委員会において具体的な検討が進められているが、わが国企業経営の実態に即し、しかもできるだけ簡素な制度構築を確実なものとするため、主要論点に対する経済界の考え方を下記に示すものである。
英国やドイツに見られる損益振替型ではなく、米国やフランスのような所得通算型とする。
連結グループ各社の個別決算を基礎として、親会社が連結申告調整を行なうことを基本とし、内部取引の調整等については極力簡素な制度とする。
全所得について法人税の納税義務を負う内国法人(普通法人全般)を対象とする。
持分を判定する際の株式の範囲は、普通株式の他、種類株式も含む全ての株式とする。
連結親会社となる法人が直接または間接に、その発行済株式(種類株式を含む)の全てを保有する法人を連結納税の対象となりうる子会社とする。
なお、子会社の従業員持株会(閉鎖型に限る)が保有する子会社株式ならびに子会社の役員(現役に限る)が保有する子会社株式は、親会社の持分とみなす。
連結納税対象となりうる子会社の中から、連結親会社は、任意に連結子会社を選択することができる。
親会社が連結所得に基づく法人税の納税義務を負う。親会社が不納付等の場合には、各子会社が自社の連結納税債務に応じた義務を負う。
法令により親会社と子会社との間の納税債務の配分方法を定める。
連結納税制度の採用は任意とするが、一定期間(例えば5年)の継続適用を義務づける。
また、連結子会社は親会社が任意に選択するが、いったん連結子会社として選択すれば一定期間の継続適用を義務づける。
グループ各社で統一する(事業年度が親会社と同一でない子会社は連結納税対象となりえない)。
統一を要しない。
連結課税所得の計算は、連結グループ内の個々の法人の確定した決算に基づき計算した個別の課税所得に、一定の連結調整を行って計算する。
原則として、個別計算上時価で譲渡したものとして譲渡損益を計上した上で、当該金額を連結所得計算上減算する(譲渡法人において譲渡損益を繰り延べる)。
グループメンバー間の金銭債権に係る貸倒引当金、寄附金等
従来の取扱いの実態を踏まえ、連結納税制度における損金算入限度額の在り方を検討する。
各種租税特別措置(特別償却、所得控除、準備金)
各措置の制度趣旨に照らして、個別ベースで計算するものと連結ベースで計算するものとを選別する。
法人の規模等に応じて適用される法人税率については、連結納税グループ全体の規模に応じて連結課税所得に対して適用する。
各メンバー法人において計算される個別の税額控除額を各法人に還付する。
連結子会社あるいは親会社となる以前の繰越欠損金は連結所得計算上利用できない(ただし、個別法人における所得計算上は利用できる)。
繰越欠損金の場合と同様、連結グループ加入以前から発生し連結グループ加入後一定期間内に実現した含み損について一定の租税回避行為防止措置を講ずる。
投資価額修正は毎期は行わない。ただし、子会社株式譲渡の際に調整を行う。
連結所得計算上計上された欠損金については、当該欠損金を生じた連結メンバー法人がグループを離脱した場合、当該離脱法人は、連結所得に計上された欠損金を引き継ぐことはできない。
連結所得計算上繰り延べられた内部取引に係る譲渡損益等は、当該取引の当事者である連結メンバー法人がグループを離脱した場合、その年度において課税を行う。
なお、連結グループに加入している子会社を連結納税対象となる条件を満たしているにもかかわらず加入後短期間で連結グループから離脱させることを禁止するなど、租税回避行為防止措置を講ずる。