経団連 宇宙政策ビジョン
わが国宇宙開発・利用体制の改革と宇宙利用フロンティアの拡大
ひまわりの気象情報の経済波及効果については、年間で直接的経済効果として、(1)気象情報サービス(約320億円)、(2)気象観測機器(約200億円)、間接的経済効果として、(3)航空事故・海難事故抑制(各数十億円)、(4)農産物被害抑制(数百億円)、総額1000億円以上の顕在的・潜在的経済波及効果があると算出されている。
((社)日本航空宇宙工業会の委託により三菱総合研究所が試算)
わが国NHKの衛星放送の有料放送開始は89年。英国のBスカイBは90年、米国のディレクTVは94年から。受信世帯数は、NHK衛星放送が1000万人、BスカイBが800万人、ディレクTVが820万人。
98年度の宇宙利用放送関連分野の市場規模は、BS放送1617億円、CS放送1500億円、関連機器(チューナー内臓TV、チューナー内臓VTR、アンテナ、チューナー等)1971億円、総額5088億円であり、96年度の3409億円に比べ2年間で49.2%の伸びを示している。
(「宇宙産業規模の調査報告書」(社)日本航空宇宙工業会、2000年3月より)
世界の宇宙産業(宇宙機器産業および宇宙利用産業)の市場規模は、98年に976億ドル、2002年には、約1.5倍の1378億ドルになる見込み(State of the Space Industry, Space Publications)。同出典の2001年と2002年のデータを基に、2002年の対前年首鞜�竚癈鷭∂焜聨纃瘟赧漓�籬�㏍聽轣蛹就邃元痰娯絣弦羇験⊂桿轣蛹Γ蔚飴頏阡繝�籟鹿齔瘤嘗をみると、宇宙機器産業は4.399%、宇宙利用産業は18.28%となる。首鞜�竚癈鷭∂焜聨纃瘟赧漓�籬�㏍聽轣蛹就繞竅粐竅甍痳祕瘁箏甍⊂桿轣蛹Γ蔚飴頏阡繝�籟鹿齔瘤嘗を基に2010年の世界の宇宙産業の市場規模を推計すると、宇宙機器産業9.8兆円、宇宙利用産業30.4兆円、計40.2兆円となる見込み(1ドル=108円で換算)。
Intelligent Transport Systems. 交通に関する総合的な情報通信システム。
わが国宇宙産業の市場規模は「宇宙産業規模の調査報告書」(社)日本航空宇宙工業会、2000年3月より。世界の宇宙産業規模はState of the Space Industry 1999,Space Publicationsより。
わが国宇宙機器産業の規模は「宇宙産業実態調査報告書(平成10年度)」(社)日本航空宇宙工業会、1999年11月より。世界の宇宙機器産業規模は注 1-6 に同じ。
同上。
国家産業技術戦略より。
米国、ロシア、欧州、中国など日本を除く宇宙先進国の宇宙開発は、東西冷戦下における軍事技術の強化がベースとなっている。冷戦後においても、ロケット・衛星の開発に膨大な国家予算を投じ産業育成を図るとともに、これにより力を付けた企業による宇宙商業化を推進している。また産業の裾野も広がり、要素技術からシステム技術まで幅広い分野でベンチャー企業の育成が図られている。
98年のわが国宇宙機器産業の規模は3789億円で世界の6.3%、宇宙利用産業の規模は7922億円で同17.4%、宇宙産業全体では1兆1027億円で同10.5%を占める(出所は注 1-6,7 に同じ)。2010年の世界の宇宙機器産業の規模が9.8兆円、宇宙利用産業の規模が30.4兆円、宇宙産業全体で40.2兆円と見込まれることから(注 1-4 )、世界におけるわが国の宇宙機器産業の占有率の目標を10.5%とすると1兆290億円、宇宙利用産業の占有率の目標を17.4%とすると5兆2896億円、合計で6兆3186億円となる。
日米の宇宙開発リソースの比較(99年 宇宙開発事業団調査等より)
項目 | 日本(宇宙開発事業団) | 米国(NASA) |
予算(99年度) | 約1920億円 | 約1兆7000億円(US$=¥125) |
人員 | 1,079名 | 17,900名 |
欧米の宇宙政策
宇宙開発委員会設置法は、「宇宙開発委員会」が扱う宇宙開発を「人工衛星及び人工衛星打上げ用ロケットの開発並びにこれに必要な施設及び設備の開発」「人工衛星等の打上げ及び追跡に必要な方法、施設及び設備の開発並びに人工衛星の打上げ及び追跡」と定義しており、宇宙産業の育成あるいは宇宙開発成果の国民生活向上への展開等が含まれていない。
宇宙開発政策大綱は、第1章の基本方針の中で「宇宙産業の発展への配慮」がうたわれ、第5章に「民間における宇宙開発利用の促進」に関する記述があるが、欧米に比べ、宇宙の産業化への施策は不充分である。
例えばドイツでは、ドイツ航空宇宙センター(ドイツ政府宇宙機関)の出先機関毎にイノベーション・オフィスを設置し、宇宙研究開発で培われた先端科学技術やノウハウを宇宙以外の産業へ移転し、実用化のための開発援助やベンチャービジネスの設立のサポート等を行っている。
今後の有望な新市場、新事業としては、例えば、低/中高度(LEO/MEO)周回衛星通信システムの商用化、情報通信やリモートセンシング分野のGIS(地理情報システム)技術と融合したカーナビゲーションの多機能化と高性能化(10m級分解能)、民間の気象事業による気象情報サービスの提供、GIS応用の事業、超高速・大容量化によるインターネット通信、グローバルマルチメディア移動体通信への利用加速、地上光ケーブル通信と統合化されたシームレスな通信網事業、ITS(高度交通情報システム)派生事業等が考えられる。
スカイブリッジは、仏アルカテル社・エスパス社と米ロラール・スペース・コミュニケーションズの提携による計画。グローバルスターは、グローバルスター社(米ロラール・スペース・コミュニケーションズ社、クアルコム社等の出資)の計画。
陸(自動車、鉄道)・海(船舶)・空(航空機)の総合的交通システムネットワーク。
例えば、米ヒューズ・スペース&コミュニケーションズ・インターナショナル社のディレクTV、米ロラール・コミュニケーションズ社のロラール・オライオン、仏アルカテル社のヨーロッパスター等。
CALS:Continuous Acquisition and Lifecycle Support.CALSの定義は、「あるプロジェクトの活動に関わる全ての情報を電子化し、情報の共有・再利用を図り、生産性の向上、信頼性の向上、利便性の向上を図る」あるいは「製品やシステムのライフサイクル全体にわたって、連続的に調達し、改善し、運用が行えるように電子情報を作り、交換し、管理し、使う体制を作るというコンセプト」等。最近の定義では、 "Commerce At Light Speed"ともされている。
静止軌道に対して約45度の軌道傾斜角を与えた円軌道あるいは長楕円軌道上に複数の衛星を配置し、地上の特定の地点から見て天頂付近に常に1つの衛星が存在するようにするシステム。このシステムを使用する衛星通信は、高仰角であるため建物や樹木による通信の途絶が少ない。わが国向け静止衛星については、その周波数及び軌道の確保が益々困難になってきているため、準天頂衛星通信システムは、その代替として、高仰角の移動体衛星通信など今後の衛星利用に有用である。
衛星要素技術として、次世代高性能姿勢制御技術、先進機構・材料技術、宇宙構造技術、熱制御技術、小型高機能宇宙システム技術、宇宙環境計測技術、宇宙用電力システム技術、宇宙用推進技術、高度管制運用技術、ロボット応用化技術等。
衛星利用サービス技術として、宇宙からの地球観測利用サービス技術、衛星通信利用サービス技術、測位利用サービス技術、宇宙環境利用サービス技術、軌道上サービス技術等。
宇宙ステーション(JEM)利用で期待される分野としては、