わが国経済は長く続いた低迷期を脱し、漸く民需主導の自律回復軌道に復帰しつつある。少子・高齢化が進みつつある中で、国民の将来不安を払拭し、21世紀に向けて経済新生を図るため、産業競争力の強化等が必要であり、企業は自立・自助の原則に基づいて、経営革新を促進し、国民の期待に応える必要がある。
企業は企業家精神を大いに発揮して、新たな事業・雇用機会を創造していかなければならない。また、わが国を創造性溢れる国民経済に再建するとともに、海外から信頼される国づくりを進めなければならない。さらに、積極的なディスクロージャー等によりアカウンタビリティを高めるとともに、企業倫理の徹底により社会からの信頼の向上に努めていく必要がある。
グローバリゼーション、IT革命、世界レベルでの環境問題等が進行する中で、アジアはじめ世界各国のわが国への期待はますます増大しており、今こそ企業が果敢にこれらの課題に挑戦することが求められている。
景気の自律回復を確実にするためにも、企業は事業の再編・合理化を早急に進めるとともに、経営資源を有効に活用し、競争力の強化に努める。
また、企業は、政府の規制緩和措置、IT革命等を推進するミレニアム・プロジェクトを活用するなどして、新規事業の創出に努め、雇用の拡大を図る。その際、労働意欲の高い高齢者や女性の就労を促進する。
政府には、企業の経営革新を推進するため、金融システムの安定・強化、商法改正、連結納税制度の導入、規制改革の一層の推進など環境整備が求められる。
政府・与党は、税制、社会保障、地方財政を包括した財政改革のグランド・デザインの検討を急がなくてはならない。
まず、来年1月に迫った中央省庁再編にあわせて、特殊法人改革、市町村合併をはじめとする地方行財政改革、公共事業改革に早急に取り組むべきである。
また、国民の将来不安を払拭するため、年金、医療、介護、福祉に関する負担と給付のあり方を抜本的に見直し、世代間・世代内の負担の公平を図りつつ、持続可能な社会保障制度を確立すべきである。
企業としても、こうした社会保障制度の確立のため、退職金・年金制度を見直す。
産業技術力の強化、ひいては日本経済の発展のためには、総合科学技術会議による戦略的な科学技術政策の策定・推進が強く望まれる。
また、次期科学技術基本計画等の策定に際しては、民間主導の技術開発を強化するため、産学官の緊密な連携を図るべきである。
あわせて、政府は情報通信、物流、社会福祉、環境などの社会基盤を重点的に整備し、高コスト構造の是正を進めるとともに、IT革命に対応した法制の見直し、組織体制の整備等を迅速に進める必要がある。
国民一人一人の持つ能力を最大限に発揮・活用し、創造的で国際的に通用する人材を育成するため、政府は教育改革国民会議等の場を通じて、広く国民の意見を聴取し、教育改革を推進すべきである。
産業界としても、採用・昇進等の人事政策の見直し、学校、家庭、地域社会への支援等を積極的に進め、教育改革への協力を行なう。
企業は国、地方自治体、消費者と連携して、循環型社会の形成に努めるとともに、地球規模の環境保全のための温暖化対策を推進する。また、環境負荷の少ない事業活動を推進し、環境保全事業などに積極的に取り組む。
産業界として、包括的なWTO新ラウンド交渉の早期開始を支援し、その一環として、様々な国との間で民間ベースの対話を深める。また、政府が検討を進めている二国間自由貿易協定について、産業界としても積極的に協力する。
また、アジア各国の更なる発展に貢献するため企業間の連携を強化し、人材育成、裾野産業の育成に協力する。その際、官民が協力して、留学生の受入・派遣など人材交流に努め、外国人労働者の受入れ問題についても検討を開始する。