[経団連] [意見書]

東京都の外形標準課税の導入について

2000年2月16日
(社)経済団体連合会
税 制 委 員 会

 東京都が公表した大規模金融機関に対する外形標準課税導入の考えは、多くの問題を抱えている上に、地方法人課税の改革の方向に反するものであり、容認できない。法人事業税の外形標準課税の問題は、地方消費税の拡充を含めた地方税の簡素化・見直しの中で総合的に対応することが重要である。

  1.  財政問題への対処は、歳出の徹底効率化が大前提である。今回の措置は、バブル期に5兆円から7兆円程度にまでに拡大した東京都の歳出構造の徹底的見直しが不十分な中で、選挙権がない特定の法人企業のみに対し、納税側の理解なく増税を行なうものである。

  2.  今回の措置は、金融システムの安定化に向けた政府の取り組みと明らかに矛盾し、公的資金の円滑な返済に悪影響を及ぼすとともに、景気・市場に対してネガティブ・インパクトを与えることも懸念される。また、ビックバンの下での国際化を目指す東京金融市場の円滑な発展と首都の経済活性化を阻害する要因となる。

  3.  法人事業税への外形標準課税の導入による税負担の固定化は、企業の固定的コストの増大を通じて、経済の活性化や国際競争力の維持・強化を妨げるものであり、諸外国においても、外形標準課税としての法人課税は、廃止・縮小傾向にある。このような課税は、金融機関の東京都における雇用や投資、さらには、信用供与など、事業活動の萎縮や体質強化の遅れなどの悪影響をもたらすものである。

  4.  現状においても、企業は、行政サービスの対価として、土地・家屋・償却資産にかかる固定資産税、都市計画税、法人住民税均等割、事業所税といった、相当規模の外形標準による税負担を行なっており、今回の措置は、さらなる負担増を強いるものにほかならない。

  5.  経団連では、地方法人課税のあり方について、かねて提言を重ねてきたところであるが、これを契機に政府においても、法人住民税と法人事業税の併課など複雑な地方課税の簡素化、行政サービスの受益と負担との関係、さらには直間比率の見直しを含めた地方税制のあるべき姿について、早急に対応を進めていくべきである。
     また、国と地方の事業・財源配分の抜本的見直し、地方自治体の財政規律の確立、さらには、広域行政の推進による行政の効率化など、地方の行財政のあり方について真剣に検討すべきである。

以  上

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