21世紀に向け、循環型社会の推進はますます重要な課題となっている。循環型社会は、エネルギーを含む資源の投入量の可能な限りの抑制、資源の再利用促進による環境負荷の低減、適正処理の推進が全体として図られるべく、不断の努力が重ねられる社会と考える。その意味で、廃棄物対策の基本は、リデュース、さらに、リサイクル・リユースを進め、できるだけ最終処分場に回らないようにすることである。
産業界は自主的取組みを中心に据えて、最終処分量の削減のみならず、排出量の抑制、リサイクル・リユースの促進に積極的に取組んできた。また使用済み製品についても対策を進めてきた。今後も、従来以上に取り組みを強化して、その推進を図っていく。循環型社会の推進にあたっては、こうした自主的取組みが最大限尊重されることが重要である。
廃棄物対策を最大限進めたとしても、中間処理施設も含め廃棄物の処理・処分施設の確保は欠かせない。処理・処分施設は循環型社会の一部であるが、その確保は現状において最もひっ迫した課題であり、各関係主体がそれぞれ協力しあいながら、国全体として取組まなければならない。
とくに国・地方公共団体は、処理・処分施設は社会として必要不可欠なインフラの一部と位置づけ、周辺住民をはじめとする利害関係者の調整に積極的に取り組む等の環境整備を行うことが当面の最重要課題である。地方公共団体においては、自らが一部事業主体となり、処理業に携わることも含めて、処理・処分施設の確保に取り組むことを期待する。いずれの国においても廃棄物処理施設等の確保には困難を伴ないつつも解決を図っているのが実情であり、わが国においても関係者間での意見を調整するメカニズムの確立が求められる。
廃棄物の有効利用、リサイクルを推進するうえで妨げになっている法制度の見直しも重要な課題である。例えば、廃棄物の定義を見直すとともに、一般廃棄物と産業廃棄物の区分を有害性の有無に着目して見直し、一体的・効率的に処理できるようにすることが合理的である。また、リサイクルも含めた効率的な処理の促進に向けて、自区内処理原則の見直しや都道府県を越えた広域処理等の推進に、地方公共団体が協力する必要がある。地方公共団体ごとに異なっている廃棄物に関する指導要綱の統一も肝要である。
循環型社会を推進する上で、技術開発の推進、普及は不可欠の課題である。ミレニアム・プロジェクトにおいても、廃棄物処理に係る技術開発が盛り込まれたが、中長期的観点から強力に推進していく必要がある。
不法投棄・不適正処理の防止は喫緊の課題である。取締りの強化など、行政における強力な対策が期待されるが、排出者も責任をもって適正処理にあたらなければならない。また、処理・処分に携わる者が循環型社会の推進に向けて、産業として重要な役割を果していけるよう、業許可要件の見直しなどの環境整備も重要な課題である。
使用済み製品の処理・リサイクルを進めるにあたっては、生産者・事業者(流通業者等も含む)が重要な役割を果すことは当然であるが、利用者・消費者、行政も含め、各々が役割と責任を分担し、業種・業態の特性を踏まえた製品毎のシステムを構築していくことが現実的かつ実効性のある措置である。
今日、リデュース・リユース・リサイクルの推進、さらには廃棄物の処理・処分に関し様々な法律が存在し、かつ現在、所管官庁において各法の改正ならびに新法の制定が検討されている。また与党において廃棄物・リサイクル政策全体を包括した基本的枠組みの構築を目指し、循環型社会基本法(仮称)の制定が検討されている。これら関係各法の改正ならびに新法の制定は、以上の現状を踏まえたものとすべきである。
以下は、こうした基本的考え方のもとに、産業廃棄物対策と使用済み製品のリサイクルを含めた処理の問題を中心に、産業界の考え方を述べるものである。
産業界は、従来より、廃棄物発生量の抑制、最終処分量の削減、リサイクルの推進等に業界毎に目標を掲げ積極的に取組んできた。さらに土地を含めた資源を最大限に有効活用する観点から、産業廃棄物最終処分量を削減することを対策の基本として、経団連では自主的取り組みの強化を図った。99年12月、環境自主行動計画廃棄物対策編を公表し、そのなかで、新たに産業界全体の目標として、2010年度に最終処分量を1990年度実績の25%程度(1996年度対比で約30%)まで削減することを掲げた。今後、この目標の達成に向けて、発生量の抑制やリサイクルの推進等に一層努めていく。
行政は、こうした産業界の自主的取組みを最大限尊重すべきである。自主的取組みは、自らの業をもっともよく知る事業者が技術動向等を総合的に勘案して、費用対効果の高い対策を自ら立案しこれを実施することができる点で有効である。計画的な削減を義務づけるといった規制は、経済情勢、技術的動向、リサイクル市場の進捗状況、社会全体としての効率性、業種・業態の実情等、を総合勘案して行うことができるか疑問であり、こうした自主的取組みの成果を見極めながら慎重に行われるべきである。
最終処分量の削減に最大限努めても、ゼロにはならない。産業廃棄物最終処分場の確保はもはや一刻の猶予も許されない課題である。
処理・処分施設の確保については、民間の努力だけでは限りがあることから、経団連ではかねてより、国・地方公共団体は、最終処分場を含め、廃棄物処理施設を国の重要な社会インフラと位置付け、整備促進を図るべきと主張してきた。厚生省が廃棄物処理センターほか特定施設の整備に対して、国庫補助等の思い切った支援策を打ち出そうとしていることは評価する。
地方公共団体においては、国の行う環境整備のメリットを最大限に活かし、利害関係者の理解と協力を得て、処理・処分施設の整備促進に実効をあげることが強く求められる。特に、経済活動にとって必要不可欠な最終処分場の確保が当面の最重要課題と認識し、国や地方公共団体が自ら事業主体として参画することも含めて、実効ある措置を講ずる必要がある。
不法投棄・不適正処理の現状は甚だ遺憾であり、その防止は喫緊の課題である。必要な処理・処分施設の確保に加えて、国・地方公共団体は不法投棄の監視・取締り体制を一層強化するとともに、悪質な業者に対しては法を厳正に適用し、厳罰をもって処すべきである。国・地方公共団体が、処理業者に係る情報の整備・提供に取組むことになったことは評価するが、併せて、業許可要件の見直し(資金力・技術力の審査等)、優良処理業者認定制度の創設などの措置を通じ、廃棄物処理業が産業として発展する基盤を整備すべきである。
排出事業者においては、「事業活動に伴って生じた廃棄物を自らの責任において適正に処理しなければならない」とする廃棄物処理法の基本精神に則って処理を行なうことが肝要である。処理を委託する場合には、処理委託基準の厳守はもとよりマニフェスト制度に則り適正処理の確認に努め、不法投棄・不適正処理の防止に積極的に努めることは当然である。なお、不法投棄・不適正処理が生じた場合の対応として、特定排出事業者が原状回復すべき事由が明確に立証される場合には原状回復の措置命令の対象とされると理解する。
また、産業界は、産業廃棄物処理事業振興財団ならびに不法投棄原状回復基金への協力を通じて、処理施設の整備ならびに不法投棄・不適正処理の防止、円滑な事後対策に努めている。
使用済み製品のリサイクルを含む適正処理の促進は、ますます重要な課題になっている。生産者・事業者が重要な役割を果すことは当然であるが、利用者・消費者、行政も含めて、各々が役割と責任をわかちあい、共に取組んでいくことが不可欠である。
生産者は、生産から消費、廃棄に至るまでの製品のライフサイクルを通して環境負荷の低減に向け、様々な取り組みを進めている。設計段階では、製品の長寿命化に努め、使用済み製品が素材も含めてリサイクルしやすくなるよう配慮して設計を行い、また生産工程での廃棄物の発生抑制、使用段階でのエネルギー効率の向上等に様々な努力を払いつつある。今後もこれらの役割を果していくことは当然であり、さらにこうした努力を反映した情報提供を行う等、消費者の共感を得ていく必要がある。
他方、わが国においては、既に、容器包装リサイクル法が施行され、生産者・事業者によるびん・缶・プラスチック等の容器・包装廃棄物のリサイクル等に取組んでいる。家電についても、家電リサイクル法により生産者・事業者の役割が明確化されるなど、リサイクルシステム構築に向けた努力が続けられている。このほか、自動車についても使用済み自動車対策が進められている。これらは、業種・業態の特性を踏まえ、現実的かつ実効性のある、製品毎のシステムの構築を目指したものであるが、今後も技術革新や経済情勢等をふまえ、生産者・事業者が創意工夫を最大限に活かすことができるシステムの構築を目指すべきである。
消費者は、購買、保守を含む使用、廃棄それぞれの段階で重要な役割を果すなど循環型社会の一翼を担っている。リサイクル促進と廃棄物の削減には、消費者ひとりひとりの当事者意識の向上が重要であり、そのための手段として、処理費用を直接負担することは一部の使用済み製品にみられるように重要な課題である。さらにその他の一般廃棄物についても排出時に処理費用を直接負担することを検討すべきである。
行政は、現在、容器包装廃棄物等のリサイクルを含む処理の推進に直接、一定の役割を果している。今後、行政はリサイクル等の一層の推進に向けての広域処理の推進・支援、消費者への啓蒙、リサイクル製品の積極的購入・利用に配慮することが期待される。
既に述べたように、使用済み製品の引取り・処理・リサイクルについては、容器包装リサイクル法や家電リサイクル法のなかで、生産者・事業者、行政、消費者がそれぞれ役割分担する仕組みができ、産業界はこれらの製品毎の仕組み作りをサポートしてきた。今後も、使用済み製品の引取りから処理まで一切を生産者・事業者に委ねるのではなく、業種・業態を反映し、また自主的取り組みに配慮しつつ、引取り・処理・リサイクルのシステムを構築していくことが望ましい。その際、社会全体としての効率性・実効性・公平性の観点から、個別製品毎に関係主体間での望ましい費用負担のシステムを構築することが、循環型社会を推進する上で有効と考える。こうした考え方は、OECDで検討されている拡大生産者責任の考え方とも通底している。