経団連は1月31日、東京・大手町の経団連会館で、都市・地域政策委員会・住宅政策委員会共管の高齢社会対応部会(渡邊大樹部会長)を開催した。今回はキーノートスピーカーとして、明治大学の園田眞理子教授とミサワホームの関係者から、高齢社会に対応した住まい・まちのあり方について、住宅を中心に説明を聞いた。
「少子高齢化・人口縮減時代における家族と住まい」と題して、社会が高齢化するなかにおける市場の状況と、このまま対策を施さない場合に住まいや郊外のまちがどうなっていくのかを説明したうえで、最後に、出口戦略としての対策を提示したい。
少子高齢化の進行は全国一様ではなく、大都市とその周辺部で顕著となっている。最近50年で平均寿命は1.5倍に延びており、人生の後半部分で見れば3倍に延びている。そのため、高齢期を成熟期、引退期、老後期に細分化して考える必要がある。また、人口ピラミッドを踏まえると、今後20年は75歳以上人口の増加が見込まれるため、高齢者の健康状態と持ち家か賃貸かという資産状態の二軸でマーケットを見定めるべきである。
一方、まちの発展は植物と似ており、鉄道の沿線から伸びるように枝葉としての住宅地がつくられている。住宅地にも人間と同様に年齢があり、東京では多摩川以西の地域で今後激烈に高齢化が進む。ある住宅地のアンケート結果では、10年後には26%の住宅が、30年後には72%の住宅が空き家化するおそれがある。
したがって、丘の上のファミリー住宅と駅近マンションの地域内循環という「やどかり型」流通ビジネスの構築が急務となる。また、郊外では公と私の中間としての共有財産となる「退職者コミュニティー」を創設するなど、エリアマネジメントによる新たな価値創造が重要である。住宅は単なる「箱」ではなく、緑価値や教育価値といった良き「サービス」を提供する「住宅地」としての価値を評価する必要がある。
ミサワホームグループでは、リフォームや不動産流通、家事代行、ライフサポート等の11分野に及ぶ高齢者対応事業を手掛けている。特にグループ会社のマザアスでは、「納得・満足・継続」を社是として全国10施設で高齢者住宅や介護サービスを展開し、地元の高い評価を受けている。換算すると利用者3に対して常勤スタッフ1の割合で職員を配置しており、地域包括ケアモデルの構築を目指している。
事業展開上の課題としては、利用者の視点からの高齢者施設の種類の簡素化、事業者の視点からの関係法令の規制緩和、制度面の視点からの元気なうちからの住み替えの促進が挙げられる。
出席者からは、「エリアマネジメントを推進するための具体的なアイデアは何か」といった質問が出された。これに対して園田教授からは、「地域住宅管理会社を設立して、公園や道路も含めた住宅地の管理を行うことが有効と考えられる」との回答があった。