経団連は3日、東京・大手町の経団連会館で新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)との懇談会を開催した。当日は、古川一夫NEDO理事長から、エネルギー・資源問題に対するNEDOの取り組みおよび、今後の重点的活動分野について説明を聞くとともに意見交換を行った。説明の概要は次のとおり。
NEDOは、産学官の英知を結集し、エネルギー・地球環境問題および日本の産業競争力の強化を図ることを使命とする。
予算額は民間企業の研究開発費総額の約2%程度であるが、次世代を担う基礎研究費の総額の約30%に相当する。したがって、NEDOの予算活用方針は、日本の次世代の産業競争力の方向を大きく左右する。
2009年度の日本の発電電力量に占める再生可能エネルギーの割合は、水力を除くと約1%にとどまるが、IEA(国際エネルギー機関)によれば、最大19%まで導入が可能とされる。ただし、実際に導入するにあたっては、出力の変動に対する電力系統の吸収能力を高めるため、スマートグリッドや蓄電技術が必要となる。また、発電コストの低減が課題である。
風力発電については、風車の大型化および洋上風力の活用に向けて技術開発・実証研究を進めている。スマートコミュニティーを支える蓄電池技術については、2020年を目標に、低コスト化、長寿命化、運用の容易化を実現するべく、技術開発に取り組んでいる。
一昨年の夏以降、レアアースは価格高騰や輸出許可枠の減少により、入手が困難となっている。
NEDOは探鉱開発、リサイクル、代替材料開発、備蓄という、レアアースの安定供給のための対策のうち、とりわけ、代替材料の開発に注目し、技術開発の促進に取り組んでいる。
世界各国がエネルギーや環境問題等、さまざまな問題を抱えるなか、それらを解決するための新しいインフラシステムが求められている。そこでNEDOは、中長期的取り組み、異業種連携、国際連携等のNEDOの強みを活かし、インフラシステムの国際展開を図ることに注力している。それによって、ビジネスモデルを日本に有利に設計し、技術開発・実証を通じて競争優位を獲得することが可能となる。
例えば、日本がこれまで培った電力系統運用技術を基に、米国でスマートグリッド技術を実証事業により確立し、海外展開を図るとともに、国際標準策定に貢献することを目指している。また、中国の製鉄所における熱の再利用設備の導入等、NEDOがこれまでに実施した国際実証事業による、省エネ技術の普及件数は350件を超える。
震災以降、NEDOへの期待がさらに高まっていると認識している。NEDOとしては、今後も、産学官の結節点としてイノベーションの創出を促進していきたい。