経団連観光委員会(大塚陸毅委員長、山口範雄共同委員長)は1月30日、東京・大手町の経団連会館で会合を開催し、首都大学東京の本保芳明教授から、今後の観光政策のあり方、とりわけ今年3月に改定が予定されている観光立国推進基本計画について、説明を聞くとともに懇談した。
本保教授は基本計画の改定に対して、「まずは経済政策の原点に立ち返り、観光関連産業の生産性を向上し、国際競争力強化を図るため、国としての必要な役割を果たすという基本姿勢を再認識すべき。国は、司令塔として調整機能を発揮して全体最適を図る一方、それ以外は地方、民間に委ねるべき」と述べた。そのうえで「ビジョンと戦略を提示するとともに、関係者間でその方向性を深く理解・共有することが大事」とし、国としての役割の明確化が重要であると強調した。
具体的取り組み姿勢と目標については、「リソースが絞られるなか、選択と集中が不可欠。インバウンド(訪日外国人旅行)と休暇改革に集中して取り組んだことは評価できる。基本計画では、数値目標一辺倒ではなく、質重視の姿勢へと転換する必要がある」と指摘した。
また、個別戦略に関しては「戦略全般について、小手先の変更は不要であり、インバウンド対策、国内観光・MICE(注)の推進といった重要な柱を中心に取り組んでいくべきである。とりわけインバウンド対策に関しては、プロモーションを図るにしても、中国だけでなく各国ともにバランスを取って取り組むべきである」と述べた。加えて「観光圏による広域連携の必要性を打ち出したが、頭で考えただけの政策でうまくいっていない。うまくいっていない仕組みにしがみつかず、勇気を持って見直すことも必要である」と、これまでの政策の抜本的な見直しについても指摘した。
さらに、戦略・政策を執行していく体制の強化の必要性についても強調し、「国の観光行政の最適化を模索すべき。観光庁の執行体制の強化に向けて、(1)政策立案への集中(2)訪日外国人旅行者に対するキャンペーンの日本政府観光局への移管・一本化(3)PDCAサイクルの見える化と公表による結果主義・成果主義の徹底――などを推進すべき。また、中長期的には観光行政と文化行政の一体化も検討に値する」とした。
観光委員会は、本保教授との懇談終了後、「新たな観光立国推進基本計画に向けた提言(案)」について審議した。