21世紀政策研究所第85回シンポジウムでの パネルディスカッションの模様 |
経団連の21世紀政策研究所(米倉弘昌会長、森田富治郎理事長)は12月14日、東京・大手町の経団連会館で第85回シンポジウム「政権交代時代の政治とリーダーシップ」を開催した。
冒頭、森田理事長が開会あいさつし、「政権交代後も短命政権が繰り返され、不安定な政治状況は変わっていない。この間、重要政策課題は解決せず、震災に見舞われるなかで閉塞感が蔓延している。政治の政策立案および実現機能の強化が喫緊の課題である」と述べた。
その後、同研究所の政党政治プロジェクトの研究主幹である曽根泰教・慶應義塾大学大学院教授から、これまでの研究会の成果を取りまとめた「中間提言」が報告された。日本が対処すべき政治の諸問題を「政治における人材とリーダーシップ」「短命政権に終わらせないためには」「政党および政府のガバナンスの確立」など7つの課題に集約したうえで、各課題について解説を加え、それに対する具体的な解決策を提示した。
続くパネルディスカッションでは、パネリストとして仙谷由人・民主党政策調査会長代行、石破茂・自由民主党安全保障調査会長に加え、政党政治プロジェクト委員の飯塚恵子・読売新聞編集委員、日野愛郎・早稲田大学政治経済学術院准教授が参加し、曽根研究主幹の進行のもと、活発な討議が行われた。
仙谷氏は、海外も含めた「決められない政治と議会」の現状に触れ、打開策として人材育成を含めた政党ガバナンスの強化と参議院の役割の再定義が必要であると指摘した。また石破氏は、「政治家は勇気と真心をもって真実を語るべきだ」としたうえで、小選挙区制度が機能しないのは地方分権、政党法制定、政界再編の3つの前提がなされていないからだと指摘。さらに大臣は組閣時に10分で抱負を語らせて選ぶべきと提案した。また、国民主権のあり方と国家主権の意義について、政治が国民にきちんと語るべきだと主張した。
その後、飯塚氏が、ねじれ国会と解散総選挙の関連を踏まえて消費税増税問題について、日野氏が、日本の政治は拒否権プレーヤーが多数存在する仕組みであると指摘したうえで与党の政策立案に対する関与について、それぞれ両議員に質問を行った。消費税に関しては、両議員とも財政再建の重要性からも国民に理解を求める必要があること、与党のあり方については、英国のように截然(せつぜん)と分断せず党部会・部門会にも一定の政策への関与を認め、議員育成の場とすべきであるとの意見でほぼ一致をみた。
シンポジウムを通じ、日本の政治を動かすために政権交代時代に即して改革すべき点が明確となった。一方、日本の2大政党間には決定的な対立(分極)はなく、重要施策について合意できる素地のあることが確認できた。
シンポジウムの詳細は新書として刊行する予定である。また政党政治プロジェクトの研究報告書も今春、公表する予定である。