経団連は11月30日、東京・大手町の経団連会館で、宇宙開発利用推進委員会企画部会(安井正彰部会長)・宇宙利用部会(西村知典部会長)合同会合を開催した。当日は、内閣官房宇宙開発戦略本部事務局の片瀬裕文内閣審議官から、宇宙政策の現状について説明を聞くとともに意見交換を行った。説明の概要は次のとおり。
経団連が5月に発表した「宇宙基本法に基づく宇宙開発利用の推進に向けた提言」を踏まえ、政府では8月8日、宇宙開発利用の施策の重点化・効率化の方針をまとめた。
最重要課題は準天頂衛星システム(注)の構築である。米国、ロシア、欧州、中国、インドが国家戦略として測位衛星システムの構築を進めている。準天頂衛星は測位機能を持っており、GPSの補完と補強、津波など災害時の安否確認や避難誘導などが可能となる。9月30日には、2010年代後半を目途に準天頂衛星4機体制、将来的には7機体制を目指し、開発・整備・運用を内閣府が実施するとの閣議決定が行われた。
同日には、内閣府に宇宙政策の司令塔機能の強化と準天頂衛星システムを推進する体制を構築するために、来年の次期通常国会に必要な法案を提出するとの閣議決定もあわせて行われた。
11月30日の宇宙開発戦略専門調査会では、推進体制に関して議論が行われた。トップダウンによる意思決定のプロセスの導入、宇宙の実利用に向けた体制の整備、JAXA(宇宙航空研究開発機構)の改革の3点がポイントである。現行の宇宙開発委員会を廃止し、内閣府に非常勤メンバーによる宇宙政策委員会(仮称)を設置することや、現在は文部科学省と総務省であるJAXAの主務省に、内閣府と経済産業省を追加する方向で検討することになった。
国際的な測位衛星システムの構築に日本が積極的に関与することを求める委員の意見に対して、片瀬審議官は、「準天頂衛星システムの構築にあたっては、産業界も同システムを用いた海外展開を進めてほしい。それは産業競争力を高めることにつながる」と答えた。