経団連タイムス No.3067 (2011年12月13日)

提言「アジア太平洋地域における経済統合の推進を求める」を公表

−TPP交渉への参加など方策提示


経団連(米倉弘昌会長)は13日、提言「アジア太平洋地域における経済統合の推進を求める」を公表した。欧米経済の先行きが不透明ななか、アジアは引き続き世界経済の牽引役を果たしており、これを持続させるためには、域内の経済連携を深化させ、シームレスなビジネス環境を実現する必要がある。わが国としては、震災復興とともに、一層国を開き、「新生日本」を目指す必要がある。このような認識のもと、提言では、2020年を目途にアジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)を構築するための方策を示している。概要は次のとおり。

2020年を目途にアジア太平洋自由貿易圏構築を

1.基本的考え方

APEC首脳会議に先立って、わが国がTPP(環太平洋経済連携協定)交渉への参加に向けて関係国と協議に入る旨を表明したこと、また、東アジア・サミットでASEAN+6(注)経済連携協定の推進が合意されたことを高く評価する。TPPとASEAN+6経済連携協定の二つの道筋を同時並行して追求することで、2020年を目途にアジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)を完成させるべきである。経団連としても、生産活動やビジネスを展開するうえで直面する具体的な障害事例を集約し、これらの協定交渉に反映させるなど、経済連携協定(EPA)の広域化および地域経済統合の推進に向け、主体的に取り組む。

(注)ASEAN10カ国に日本、中国、韓国、インド、オーストラリア、ニュージーランドを加えた枠組み

2.TPP交渉への参加

TPP交渉においては、21の交渉対象分野すべてにわが国の主張を反映させ、高度な自由化・質の高いルールづくりに貢献すべきである。また、実質的にすべての分野において、関税の撤廃(段階的撤廃を含む)を実現することで、わが国の対米輸出競争力を確保、国内の産業空洞化を防止することが不可欠である。なお、これと並行して、わが国農業の競争力強化に向け、引き続き構造改革を推進する必要があり、経済界としても、農林水産業の経営や生産の高度化に貢献する。

3.ASEAN+6経済連携協定の実現

ASEAN+6経済連携協定の実現に向け、(1)物品貿易(2)税関手続・貿易円滑化(3)経済協力(4)産業政策(5)ハードインフラとコネクティビティの強化(6)投資・サービス貿易(7)熟練労働者の移動――について、各国経済界の意見を十分反映しつつ、議論を深化すべきである。わが国としても、残された課題である日豪EPA、日韓EPAの実現を図る。

4.日中韓FTA交渉の立ち上げ

ASEAN+6経済連携協定の実現のためには、同地域のGDPの7割を占める日中韓の経済統合が大前提となる。現在、日中韓FTA産官学共同研究が大詰めを迎えており、これをベースに来年の早い段階での交渉立ち上げを求める。

TPPとASEAN+6の双方を推進することは、わが国企業の国際競争力の行方に影響を持つ日EU経済連携協定の早期の交渉入りにも資する。総理大臣が司令塔となって、省庁横断的に取り組むことが求められる。

【国際協力本部】
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