経団連は11月22日、東京・大手町の経団連会館で、宇宙開発利用推進委員会企画部会(安井正彰部会長)・宇宙利用部会(西村知典部会長)合同会合を開催した。当日は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の田中哲夫国際部長から、諸外国の宇宙政策の動向について説明を聞くとともに意見交換を行った。
説明の概要は次のとおり。
2003年2月に起きたコロンビア号事故を受けて、米国の宇宙政策の転換が始まった。ブッシュ前大統領は宇宙探査ビジョンを提唱し、オバマ政権の下で今年スペースシャトルが退役した。10年6月にオバマ大統領が発表した米国国家宇宙政策では、国際協力の拡大などが盛り込まれ、有人探査については25年までに新しい目的地として小惑星を目指すことになった。
NASA(米国航空宇宙局)では、少なくとも20年まで国際宇宙ステーションの運用を延長する。また、国際宇宙ステーションへの輸送手段として民間企業による商業輸送の実現を支援していく。
米国の宇宙政策の見直しに伴い、国際宇宙ステーションの次のプログラムを検討する「国際宇宙探査協同グループ(ISECG)」が今後25年間のシナリオをつくり始め、今年8月に国際宇宙探査ロードマップの1次案が合意された。ISECGにはJAXAも参加している。ロードマップでは、国際宇宙ステーションを出発点とし、小惑星または月を探査したうえで、最終目的地である火星の有人探査を目指すとされている。
欧州では、欧州連合(EU)と欧州宇宙機関(ESA)が連携して宇宙政策を進めている。07年5月に策定された「欧州宇宙政策」では、国際宇宙ステーションを最大限活用することとし、無人火星探査を計画した。ESAとNASAとの火星探査共同ミッションの計画は見直しが行われている。
ロシアは、宇宙ステーション計画やスペースシャトル退役後の宇宙飛行士輸送などで国際協力を推進している。最近、ロケット打ち上げの失敗が続いたが、今年11月14日に有人飛行を再開した。ロシア宇宙庁の傘下にある国営企業は統合が進められている。
中国は有人宇宙開発を独自に進めており、国家航天局による国際協力や宇宙外交が活発化する方向である。12年秋の政権移行後も、基本路線に変更はないと見込まれている。
民間活力の活用に関するNASAの考えについて問われた田中氏は、「NASAがリスクを取って民間が頑張る新しい構図は、日本でも学ぶべきところがあると思う」と答えた。