経団連タイムス No.3066 (2011年12月1日)

社会保障協定に関する懇談会開催

−中国との交渉をはじめ協定をめぐる現状について聞く


経団連は11月17日、東京・大手町の経団連会館で「社会保障協定に関する懇談会」を開催した。外務省アジア大洋州局の山野内勘二参事官、厚生労働省年金局の日原知己国際年金課長から、社会保障協定をめぐる最近の状況について説明を聞いた。概要は次のとおり。

■ 「社会保障協定をめぐる現状について」(日原課長)

わが国は、これまでに欧米諸国を中心に12カ国と協定を締結、現在は8カ国と協議・交渉中である。具体的には、オーストリア、フィリピン、スロバキアと協議中、ハンガリー、ルクセンブルクに加えて、今年7月にインド、10月にスウェーデンならびに中国と政府間交渉入りし、インドについては、10月第2回交渉を実施した。なお、ブラジルおよびスイスとの協定については来年前半の発効を目指しており、今後周知・広報を行っていく。

社会保障協定の下では、一般的に、原則5年の一時派遣期間を超える場合等については、相手国の年金制度にのみ加入することになっているが、経済界の要望も踏まえて、厚生年金の任意加入制度の対象を全協定に拡大することにした。ブラジルとの協定発効日と同日に施行予定の政令改正で対応することとしており、今月中に公布する予定である(11月28日公布済)。

■ 「日中社会保障協定について」(山野内参事官)

中国において社会保険法が2010年10月に成立、今年7月に施行され、外国人についても社会保険への加入が義務付けられた。今年10月15日には、外国人の社会保険加入に関する規則が施行された。制度の詳細は調査中であるが、いずれにしても外資系企業の駐在員について社会保険料の二重負担が発生する。

こうした状況を受け、産業界からの要望も踏まえ、日本政府は、中国側に対し社会保障協定の交渉開始と、同協定締結までの日本人への適用猶予等の十分な経過措置の導入を累次にわたり要請した。その結果、中国は、各国政府から社会保障協定交渉の要請があったなか、社会保険法成立後の最初の交渉相手国を日本とし、10月13、14日に第1回の交渉を行った。今後、早期の締結を目指し取り組むことで中国側とも合意している。席上、中国側から、規則が施行される10月15日以降、社会保険加入手続を開始することが可能であるが、徴収の起算日については調整中との説明があった(その後、北京市は起算日を10月15日に決定)。地方の決定に委ねられている部分があり、例えば大連市では、社会保険料の企業負担分の基数計算において上限を撤廃する動きがある。

<質疑応答>

中国の社会保険法が適用される外国人の範囲および保険料賦課の対象となる収入等について質問があり、今後の交渉において、中国側に制度・運用を確認していく旨の回答があった。
(なお、11月25日、北京市は、日系企業を対象とする説明会において、(1)社会保険法が適用される外国人は労働許可証を持つ者すべて(2)保険料賦課の対象は日本での支給分を含めた給与の合計(3)保険料賦課対象額は北京市の前年度平均月収の3倍を上限とする――との説明を行った。)

【国際経済本部】
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