経団連タイムス No.3064 (2011年11月17日)

日タイ経済連携協定の再協議に向けた要望書を公表し建議

−タイの洪水被害からの復旧含め両国協力の拡大を要望


経団連は15日、提言「日タイ経済連携協定の高度化とビジネス環境の向上を求める」を公表し、同日、関係各方面に建議した。今年以降、日タイ経済連携協定(JTEPA)が物品関税、投資・サービス、人の移動などの分野で再協議の時期を迎えることに加えて、今秋のタイの大規模洪水の復旧を円滑に進めるためにも、再協議を迅速かつ着実に進めることを求めたものである。
提言の主な内容は次のとおり。

1.JTEPAの高度化の重要性

今回の洪水被害が甚大なことからも明らかなように、タイはわが国企業にとって重要なアジアの生産拠点・消費市場である。また、ASEAN諸国での事業活動やメコン地域開発などを進めるうえでも主要なパートナーである。両国が幅広い分野における協力を拡大するためには、この再協議の機会にJTEPAを高度化することが欠かせない。洪水被害を乗り越え、タイを機軸とする生産ネットワークを復旧させることは、ASEAN+6経済連携協定(注)やアジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)を推進するうえでも大きな役割を果たす。

(注)ASEAN10カ国に日本、中国、韓国、インド、オーストラリア、ニュージーランドを加えた協定の枠組み

2.具体的要望事項

(1)物品関税の撤廃スケジュールの前倒し

関税率が60%から80%と高い完成車、タイで生産していない一部の電機・電子部品のほか、タイの競争力強化に資する品目での早期関税撤廃を求める。

(2)投資・サービス分野の外資規制の緩和・撤廃

外資の100%出資が認められていない、修理・メンテナンス、ロジスティクス、建設、不動産、金融、小売、コンサルティングサービス、会計サービス、医療等の分野での規制の緩和・撤廃を求める。

(3)貿易の一層の円滑化

タイにおける鉄鋼製品の輸入ライセンス取得時の煩雑な検査の手続きおよび対象の見直しを求める。また、JTEPAの実効性担保のため、現場の担当官の育成や政府内での情報共有の推進を求める。

(4)人の移動の自由化

外資企業が外国人1人を雇用する際のタイ人4人の雇用義務、周辺国の外国人単純労働者の雇用制限の緩和を求める。特に、洪水復旧作業に従事する外国人技術者の十分な確保のため、早期の緩和を検討すべきである。また、日本人が赴任する際に必要な労働許可証の取得・更新手続きの簡素化、タイ観光の促進を目的とした査証免除期間の延長を求める。

(5)知的財産権の保護

特許・意匠・商標の審査期間の短縮、審査手続きの簡素化、権利保護の強化を求める。

(6)原産地証明制度の向上

原産地証明手続きの簡素化と、現行の第三者証明制度に加え認定輸出者自己証明制度の導入を求める。これらは、洪水被害からの復旧のための機械・部品等の輸出やJTEPA利用企業の拡大に資する。

(7)タイのビジネス環境の向上

JTEPAに基づいて年に1回開催されるビジネス環境向上小委員会において、わが国経済界が提起している課題への真摯な対応を求める。また、今次の洪水被害を踏まえ、災害に強いインフラ整備での両国間協力についても検討すべきである。

【国際協力本部】
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