経団連は18日、提言「科学技術イノベーションの推進に向けた重要課題」を公表した。東日本大震災の影響を踏まえ内容の見直しが行われていた「第4期科学技術基本計画」が8月に閣議決定され、かねて経団連が主張してきた課題解決型の「科学技術イノベーション政策」の推進等がうたわれたところであり、今後はその具体化が重要となる。そこで今般、産業界として特に重要と考え、かつ自らも主体的に関与する意欲のある課題およびその解決に資する具体的施策を提示することとした。概要は次のとおり。
震災の経験によって重要課題として強く認識されたレジリエントな社会の構築を実現するにあたり、特に重要なカギを握るのは急速な技術革新が進むICTの利活用の拡大である。具体的には、災害予測およびモニタリングシステムの構築や、災害時でもつながる情報通信ネットワークの整備、クラウドの活用を通じた個人の行政情報管理システムの構築を進める。また、さまざまな状況に対応できる災害対応ロボットの研究開発・実証実験の促進および運用システムの整備を図る。
低炭素社会の実現やエネルギーの安定供給に向け、エネルギーの供給面、需要面、エネルギーマネジメントシステムの3つの視点に立った施策を総合的に推進する。具体的には、供給面では、太陽電池や火力発電の高効率化、原子力の安全性向上、需要面では、ヒートポンプのような空調・冷凍システムの高効率化や炭素繊維による材料の軽量化、エネルギーマネジメントシステムでは、スマートグリッド(注1)に関する研究開発・実用化を促進する。
わが国において高齢化が急速に進行するなか、国民が健康かつ安心・安全に暮らせる社会を整備するため、予防医療やテーラーメイド治療(注2)、革新的医薬品・医療機器の創出、次世代医療・健康システムの構築を推進する。
東北地方の復興・再生を目指し、特区制度も活用しつつ、地方の特性も踏まえたイノベーションの拠点づくりを行う。具体的には、世界的な再生可能エネルギーの研究開発拠点、医療産業等が集積する健康医療都市、あるいは東北地方が強みを持つ材料・電子部品分野の研究開発拠点を創出する。
イノベーション創出の重要な基盤は人材であり、諸外国でも次世代人材の育成に力を入れている。わが国についても、初等中等教育における理科離れの防止や高度理工系人材の育成を産学官の連携によって強力に推進する。
これらの施策を推進するためには、産学官および府省庁間の枠を超えたオールジャパン体制が必要であり、強力な司令塔機能を持つ「科学技術イノベーション戦略本部」、産業界の意見を反映する「科学技術イノベーション戦略協議会」、政策課題の解決に資する「研究開発法人」を整備する。