経団連は5日、東京・大手町の経団連会館で、円高対応緊急ファシリティに関する説明会を開催し、会員企業から約170名が参加した。当日は、経済政策委員会の村岡富美雄企画部会長が司会を務め、内閣府の林伴子参事官(経済対策・金融担当)が「円高への総合的対応策(仮称)」(中間報告)および「円高への総合的対応策の先行実施について」を紹介しつつ、今回の対策における「円高対応緊急ファシリティ」の意義について説明した後、財務省国際局の岡村健司開発政策課長が「円高対応緊急ファシリティ」の具体的内容について説明し、その後、意見交換を行った。概要は次のとおり。
急速な円高の進行による景気下振れリスクや産業空洞化リスクに先手を打って対処していくため、政府は9月20日、「円高への総合的対応策」の基本的考え方や主要な施策リストを中間報告として公表した。
具体的には、(1)雇用の下支えや中小企業金融支援の拡充等による、円高の「痛み」の緩和(2)立地補助金の思い切った拡充やオンリーワン企業の育成等による、円高等のリスクに負けない強靭な経済の構築(3)海外企業の買収や資源権益の獲得支援等による、円高メリットの徹底活用――など、円高への「守り」だけではなく、「攻め」の対策を講じていくこととしている。
特に(3)の円高メリットの徹底活用の目玉である「円高対応緊急ファシリティ」は多くの企業に活用してほしい。
8月24日に発表した「円高対応緊急ファシリティ」は、外国為替資金特別会計(外為特会)のドル資金1000億ドルを国際協力銀行(JBIC)を経由して活用し、公的部門による政策融資やリスクマネーの供給を通じて、日本企業の海外企業買収や資源・エネルギー確保を促進することで、民間円資金の外貨への転換(円投)の呼び水とすることをねらっている。
このファシリティは、原資として外為資金をLIBOR(ロンドン銀行間取引金利)フラットという金利で融通することで、通常のJBIC融資に比べて金利コストが相当低く抑えられることがポイント。したがって、外為資金の運用として外為法の目的(為替相場の安定)に沿うように、民間での円投が促されることが重要となる。
M&A資金の融資については、国内大企業向けの貸し付けや邦銀経由のツーステップローンがJBIC新法の先行実施業務と位置付けられたことにより、取り扱いが可能となったものである。資源エネルギーの確保については、優先株・劣後債といった出資形態の活用を図り、意思決定の迅速性を阻害しないようにしている。
ファシリティの利用にあたり、申請受理や第三者認証の取得のような特段の手続きは必要なく、ユーザー側の負担は極力軽減している。JBICではすでに案件の相談受付を開始しており、企業の積極的活用を期待している。
「円高対応緊急ファシリティを1年間の時限措置とせず、さらに延長できないか」という意見に対し、岡村課長は「政策としては、円高の長期間の継続を甘受することを前提とした制度設計はできない。期限到来時には、円高対応緊急ファシリティの効果が表れて、延長が必要ない状況になることを期待している」と答えた。
また、「外為特会からドル資金をドルのまま融通しても円高抑制の効果は小さいのではないか」という質問に対し、岡村課長は、「確かに為替への効果という面では、円投誘発を経由するという意味で、間接的である。ファシリティの効果としては、円高抑制に加えて、円高の被害緩和やメリット活用という面も大きい。企業の海外活動を支援する有効なツールとなり得ると考えているので、是非ご活用いただきたい」と答えた。