経団連は18日、「海賊対策の強化に向けた提言」を公表した。ソマリアの海賊の活動はアジアと欧州を結ぶソマリア沖・アデン湾にとどまらず、インド洋まで拡大し、通商・海洋立国である日本にとって大きな脅威となっているため、具体的な海賊対策を求めた。概要は次のとおり。
日本は、輸出入合計で貿易量の99%を海上輸送に依存し、シーレーンの安全確保が非常に重要である。日本関連船舶はアデン湾を年間2000隻、ペルシャ湾を3400隻が航行しており、原油の輸入や自動車等の輸出にとって海賊は脅威である。海賊を避けるため、南アフリカの喜望峰を経由すると、燃料代の増加や納期の遅れが生じる。ソマリア沖・アデン湾を航行する場合でも追加保険料や警備員のコストが増加する。
ソマリアの海賊はロケットランチャーなどの重装備をして船舶を襲撃し、数億円の身代金を要求する集団である。ソマリアには暫定政府があるが、無政府状態に近く、海賊を取り締まることができない。
海賊の活動範囲はアデン湾からインド洋まで拡大しており、船舶は最短ルートを航行できない。また、ソマリア沖・アデン湾の海賊は増加しており、2011年の発生件数は上半期(1〜6月)で163件に達し、昨年の1.5倍のペースである(図表参照)。
国連安保理決議を受けて、NATO(北大西洋条約機構)、EU(欧州連合)、米国海軍中心の多国籍部隊、各国が海賊対策に取り組んでいる。
わが国は、海賊対処法に基づき護衛艦2隻とP‐3C哨戒機2機をアデン湾に派遣し、自国に加え他国の船舶も護衛している。
具体的には、次の4点の対策が求められる。
1点目は自衛隊の派遣規模の拡大である。護衛艦と哨戒機の増加に加え、補給艦を派遣すべきである。国際協力の観点からは、外国の艦船への給油に向けた法整備が求められる。
2点目は自衛隊員や海上保安庁職員の乗船である。海運会社の自衛措置とあわせて、公的警備を強化すべきである。
3点目はソマリアおよび近隣沿岸国への支援である。海賊問題の根本的な解決には、国連への拠出によるソマリア暫定政府の立て直しが必要である。また、イエメンへの巡視船艇の供与の実現も有効である。
4点目は国際ルールの整備である。ソマリアの海賊を逮捕しても、現状ではソマリアに戻されて再び海賊になっているのが実態である。海賊に対する裁判や服役に関するルールの整備を国連安保理に働きかけるべきである。