経団連タイムス No.3059 (2011年10月13日)
シリーズ記事

昼食講演会シリーズ<第12回>

−「政治と経済の狭間〜政局を読む」/時事通信社解説委員 田崎史郎氏


経団連は9月21日、東京・大手町の経団連会館で第12回昼食講演会を開催し、151名の参加のもと、時事通信社解説委員の田崎史郎氏から「政治と経済の狭間〜政局を読む」と題した講演を聞いた。講演の概要は次のとおり。

■ 政治と経済

「企業は人なり」という言葉があるが、「政治は人なり」「政治こそ人なり」と言っても過言ではない。政治は人間の営みなので、1+1がマイナスになることがあれば、2ではなく、10、20になることもある。また、経済は合理性を基準に動くが、政治は「金と票」だけでなく、情と「2つの“り”」、つまり「利」と「理」で動くものである。経済界の方々には歯がゆいかもしれないが、政治と経済は動く道理が違うので、経済的に合理的でも政治の世界では実現できないことが多い。

テレビでよく聞かれる「政局よりも政策を重視すべきだ」という意見には同意できない。政策を実現するためには政局に勝たなければならないし、政局に勝つためには国民に支持される政策が必要なので、両者は不可分の関係にある。

■ 野田総理と民主党

野田総理の長所は“言葉が強い”ことである。街頭演説を繰り返したことで聴衆に響く話し方を身に付けたようだ。また、組織の動かし方をまあまあ知っており、経済に対する関心も強い。しかし、慎重で秘密主義の面もある。

民主党の政権運営について、自民党のある議員が「民主党にはカレンダーがない。あっても日めくりカレンダーだけだ」と話していた。段取りやスケジュール感がないという弱点がある。

■ 消費税問題と今後の政局

消費税を導入した竹下政権や消費税率の引き上げを決定した村山政権に比べ、現在は厳しい状況にある。過去には消費税率の導入や引き上げとセットで減税を行っていたが、今回はそれが難しいし、党内情勢にも問題がある。

また、現在は「ねじれ国会」であり、与党の民主党が参議院で過半数を確保できていない。そのなかで自民党は、落選中の議員を中心に早期の衆議院解散を求めて強硬な態度になるだろうし、公明党も、2013年夏の東京都議会選挙を見据えて、2012年中の解散・総選挙を求めるようになるだろう。

野田総理は消費税率の引き上げに強い意欲を持っているが、このような厳しい状況と限られた日数のなかで、自身が好きな言葉どおり「素志貫徹」に行動するのは難しいのではないか。

しかし、野田総理であろうと他の総理であろうと、民主党政権であろうと自民党政権であろうと、消費税率の引き上げは、今後4〜5年の間に取り組まなければならない課題である。

【総務本部】
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