経団連タイムス No.3059 (2011年10月13日)

企業のBCMのあり方や社会システム維持方策の検討開始

−講演「東日本大震災と今後懸念される巨大地震」聞く
/防災に関する委員会、国民生活委員会合同会合


左から川合共同委員長、木村共同委員長、橋本委員長

経団連は9月29日、都内で防災に関する委員会(橋本孝之委員長)、国民生活委員会(川合正矩共同委員長、木村惠司共同委員長)の第1回合同会合を開催した。

経団連では、東日本大震災を踏まえ、企業の防災・減災や社会機能維持に向けた取り組みの見直し等の必要性が高まっているなか、企業のBCM(事業継続マネジメント)のあり方や社会システムの維持方策、行政に求められる対応等について、防災に関する委員会と国民生活委員会が合同で検討を進めることとした。

検討にあたっては、(1)両委員会の下部組織を設置し具体的な検討を進める(2)東日本大震災に際しての企業の対応の検証等にかかるアンケートを実施する(3)調査結果等に基づいて来春をめどに提言を行う――こととなっている。

初回の会合となる今回は、地震学の専門家であり、政府の中央防災会議の委員でもある阿部勝征・地震予知総合研究振興会理事・地震予知研究センター所長を来賓に招き、「東日本大震災と今後懸念される巨大地震」と題する講演を聞いた。阿部氏は、東日本大震災に関する検証結果と今後発生が懸念される巨大地震について、政府での議論や企業に求められる対応等を交えて説明した。説明の概要は次のとおり。

■ 東日本大震災

阿部理事

東日本大震災は、過去の事例から想定していた地震の規模・範囲を大幅に上回るものであった。特に、津波の被害が甚大であり、自治体が策定したハザードマップもほとんど機能を果たさないほどであった。政府の中央防災会議でも、今回の経験を踏まえて、地震・津波対策を見直し、報告書を取りまとめた。地震や津波の被害を完全になくすことはほぼ不可能であるため、今後は「防災」ではなく「減災」の観点による取り組みを強化する必要がある。

■ 東海・東南海・南海地震、首都直下地震

今後発生し得る巨大地震としては、経済社会への被害・影響の大きさから、東海・東南海・南海地震および首都直下地震が懸念されている。

東海・東南海・南海地震については、被害地域が広範に及び、津波の影響も大きいため、防潮堤の整備、避難経路の確保、情報連絡体制の確立などの避難対策が重要となる。首都直下地震については、火災の影響が大きく、消火・防火に向けた対策の検討が必要である。なお、いずれの地震についても、東日本大震災を踏まえ、政府の中央防災会議で対策を見直している。企業においては、経済中枢機能の継続性確保の観点からも、BCP(事業継続計画)の策定が非常に重要であることから、政府等での議論を注視し、実行可能な対応・対策の検討に努めてもらいたい。

【政治社会本部】
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