経団連は8日、東京・大手町の経団連会館で産業技術委員会企画部会(中村道治部会長)を開催し、エネルギー戦略研究所の山家公雄所長(兼日本政策投資銀行参事役)から、わが国のエネルギー政策について説明を聞いた。概要は次のとおり。
震災による原発事故の影響により、電力供給力不足の長期化が懸念されている。こうした状況のなか、短期的には、節電や電力使用のピークシフト、火力発電や風力発電、自家発電、蓄電池の利用等により、供給力不足を補うことが必要となる。また、長期的には、原発縮減分の代替をいかにして進めるかが課題となる。低炭素化という観点も踏まえつつ、再生可能エネルギーや省エネ、節電、蓄電等について検討を進めるとともに、わが国におけるエネルギーのベストミックスを模索する必要がある。
わが国におけるエネルギーのベストミックスを考えるうえで、再生可能エネルギーの普及が重要なポイントとなる。なかでも、特にポテンシャルが高いと考えられるのが風力発電である。世界的には、直近10年間において、その導入量は毎年3割程度増加しており、今後も増加し続ける見通しである。
今回震災の被害を受けた東北地方は、北海道に次いで風力資源が豊富な地域である。立地規制緩和等を通じ、当該地域における大規模な開発を進めるべきである。その際、電力の安定確保に向けた地産地消の促進に加え、東北地方から首都圏への大量流通に向けたネットワークの構築等についても検討する必要がある。
なお、再生可能エネルギーは発電コストが高い点が問題である。発電コストを低減させるには、個々の技術開発の促進や、スマートグリッドの活用を通じた電力システム全体の効率化が必要である。当面は比較的低コストな陸上風力発電を促進し、その間に研究開発等を通じて他の再生エネルギーの発電コスト低減を図るというシナリオも一案である。
再生可能エネルギーの普及に向け、政府の「エネルギー・環境会議」において中間取りまとめ(「革新的エネルギー・環境戦略」策定に向けた中間的な整理、7月29日)が行われ、また、再生可能エネルギー特別措置法修正に関する3党合意(8月11日)がなされた。
再生可能エネルギー特別措置法の修正案では、(1)買取条件を関係大臣や中立機関の意見を聴取したうえで決定することにした点(修正前は省令により決定)(2)買取条件を種類・態様・規模別に細かく設定することにした点(修正前は「太陽光」と「その他」の2本立て)(3)買取対象に実質的に既存設備も含むとした点(修正前は既存設備は対象外)――が特徴である。