常任理事会で講演する田中氏 |
経団連が7日に開催した常任理事会で、日本総研国際戦略研究所の理事長を務める田中均氏が、「今後の外交政策」をテーマに講演した。講演の概要は次のとおり。
民主党政権のこれまでの2年の間に日本は「行動できない国」と見なされるようになってしまった。これからの2年間は日本にとって非常に重要な時期になる。正すべきものを正して前に進んでほしい。
民主党が掲げていた「政治主導」は、官僚を信用しない「政治家主導」になってしまった。しかし、的確な情報は長く携わっているプロフェッショナル以外には求めようもなく、選挙で選ばれた政治家は判断をすべき立場にある。プロフェッショナルである官僚と責任をとる立場にある政治家の役割分担が必要である。
現在、世界では安全保障と政治や経済を分けて考えることはできない。法律により、日本版NSC(国家安全保障会議)や国家戦略局のような機関を官邸に設け、普天間基地、TPP(環太平洋連携協定)交渉への参加、北朝鮮問題等を、一つの戦略のなかで考えられるような体制を構築しなければならない。当面は国家戦略担当大臣の下に専任スタッフを設け、TPPへの参加等、対外的戦略についても構築できるようにすることが重要である。
日本の繁栄のためには、東アジアで安定した秩序を構築することが重要である。そのために重要なのが日米同盟である。台頭する中国が覇権を求めないように、日米同盟を強化して抑止力を強めるべきだ。イギリスがヨーロッパ大陸との関係を意識して、アメリカとの特別な関係を強調している姿勢に学ばなければならない。
日米関係を強化するためには、普天間基地問題を現実的に決着する方途を考えることが重要であり、日米は土俵を広げた協議をするべきである。また、アメリカが参加してのアジア太平洋地域における秩序を構築するための取り組みであるTPPにもできるだけ早く参加を表明すべきである。来年はアメリカで大統領選挙があり、TPP交渉は実体的には進まないと考えられるので、その間に、日本が国内農業改革を進める時間ができる。TPPへの参加によりアメリカとの連携を強化すれば、東アジアへの影響力を強めることができる。そうして東アジア地域でFTA(自由貿易協定)を構築し、基準やルールの統一を主導すれば、東アジア地域の需要を日本の内需として取り込みやすくなる。
東アジアサミットは東アジア地域協力を進める母体となるべきであり、資源の共同開発、原子力発電の安全性の問題、省エネ技術の普及、海上の安全の確保等の分野で包括的なイニシアティブを日本が発揮し、地域でWin‐Win関係を築くことが重要である。