経団連の住宅政策委員会(宗岡正二委員長、関口憲一共同委員長)は12日、東京・大手町の経団連会館で会合を開催し、建築家の迫慶一郎氏から、震災復興に向けた被災地での新しい住宅のあり方を含めた「東北スカイビレッジ構想」について説明を聞くとともに、意見交換を行った。概要は次のとおり。
日ごろ、中国を拠点に活動しており、四川大地震を受けて、現地の子どもたちのために日本の先端技術を用いた学校を設立するプロジェクトを進めてきた。そのようななかで東日本大震災が発生し、被災地や日本への貢献につながる現実的な震災復興策を考えたいとの思いに至った。
政府が出している高台移住方針に対して、「それでは平野部は人が住まない場所にしてしまうのか」という疑問が、“スカイビレッジ”を考えた発端である。被災地の沿岸部には標高10m以下の地域が大規模に広がり、高さ20mの防潮堤を築くのは非現実的であるため、平野部に住み続け、日本人が島国として深い恩恵を受けてきた海とのつながりを持ったまちづくりをするというのが趣旨である。
住宅島のイメージ |
具体的には、海抜20mの高さで浸水しない強固な人工地盤を持つ人工島を設置する。島は東京ドーム程度の大きさで、公共性の高い施設を持つ中心島と周辺に配置された住宅島で一つの集落を形成する。宮崎駿氏の描いた「ラピュタ」のようであると言われるが、エンドユーザーが憧れて新しい生活をやり直してみたいと思う絵を描くのが、建築家の役割であり使命である。土木と建築を同時に考えなければ出てこない発想であるが、スカイビレッジ自体が世界に誇れる街並みになる。9月上中旬には各自治体が復興方針を住民に示し始めるので、その前に提言すべきである。
高台移転のデメリットは、農家や漁師の方々が毎日多大なエネルギーと時間を使って職場である農地や港に通わなければならず、将来のランニングコストが多大になることである。スカイビレッジでは今までと移動距離が変わらないため、複数要素を考慮すると、巨大な構築物に要するコストもペイすると考えられる。人工地盤の上には約100〜500戸の住宅建築が可能であり、その下には3層で合計9万平方メートルの大きさがあるので、植物工場や水産加工場、半導体工場、作業場、駐車場も整備することができる。また、特区を活用した免税店やカジノの誘致も考えられる。島の周りには盛土をしてがれきを埋設する処理方法もある。
地盤ができれば内部のインテリア工事が同時に進められるので、急げば3年で完成するスケジュールである。
委員からは、「島の機能はミックスユースとし、地域循環住居として多世代での居住を念頭に置くべき」といった意見が出された。これに対し、「コンパクトシティーとして都市機能や用途の混成も可能であり、各世代を含む地域全体での移住も想定している」との回答があった。