経団連タイムス No.3050 (2011年7月21日)

日本の海洋安全保障で説明を聞く

−海洋開発推進委員会総合部会


経団連は13日、東京・大手町の経団連会館で海洋開発推進委員会総合部会(山脇康部会長)を開催した。当日は、東海大学海洋学部の山田吉彦教授を招き、日本の海洋安全保障について説明を聞くとともに意見交換を行った。
山田教授の説明の概要は次のとおり。

■ 南シナ海における中国の動き

中国は南シナ海に進出して、エネルギー資源を輸送するシーレーンの確保を目指している。アフリカまでのルートとして、マラッカ海峡などに注目しており、インドネシアに対する影響力を拡大している。
また、中国は、東シナ海も南シナ海も自国領であると宣言した1992年の領海法や、島の沿岸部を国家が開発すると定めた2009年の海島保護法など海洋に関する法整備を進めている。
南シナ海は日本の海上安全保障にとって影響が大きいため、日本として、ASEAN諸国間の協力に関与していくべきである。

■ ソマリア沖・アデン湾の海賊

ソマリア沖・アデン湾の海賊はインド洋全域まで広がっている。抜本的な海賊対策はソマリアの治安を維持することであるが、これが解決できていない。
周辺国のイエメンやケニアなどについても、警備体制を確立する必要があるが、世界各国はジャスミン革命などの政変に翻弄されてソマリアに関与できない。
そこで、公海上の海賊を取り締まる国際ルールを早急に策定することが求められる。日本人が事務局長に就任したIMO(国際海事機関)に期待したい。IMOから国連安全保障理事会に対して、ルールの原案を提案できると思う。
日本の船や船員が犠牲にならない最善の策は、船のロックシステムや警備機関との連携など、基本的な対応を着実に行うことである。海賊対策に特効薬はなく、経済封鎖により海賊が持つ現金を対外的に使えないようにしなければいけない。

<意見交換>

「マラッカ沖の海賊対策で効果があったのは何か。ソマリア沖と違う点は何か」という質問に対して、山田教授は「マラッカの海賊対策では、インドネシア、マレーシア、シンガポールの意識向上が役立った。マラッカ沖は領海であり、各国の主権で海賊を取り締まることができる。一方、ソマリア沖は公海であることや、ソマリアは無政府状態にあることなどが全く違う。オマーン、ジブチ、サウジアラビア、イエメン、ケニアといった隣国の警備を厳重にする必要がある」と答えた。

【産業技術本部】
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