経団連は19日、提言「平成24年度住宅関連税制改正・予算等に関する要望」を取りまとめ、公表した。
概要は次のとおり。
東日本大震災を契機に、わが国の住宅をめぐるさまざまな課題が浮き彫りとなっている。今後は、被災地域の住宅需要に的確に応えると同時に、住宅の耐震性能向上はもちろん、電力需給問題を背景として、省エネ・創エネ・蓄エネ化も全国的に進めていく必要がある。
このようななか、今年の後半からは住宅関連の重要な税制・予算措置の多くが適用期限を迎えるとともに、来年には住宅ローン減税の最大控除額がさらに縮小されることから、全体的に住宅市場が冷え込むおそれがある。
住宅投資は住宅建設による経済効果に加え、入居に伴う耐久消費財の購入等を含め、経済や雇用に対する波及効果が極めて大きく、内需の柱のひとつである。また、住宅は人々の生活の基盤として心身を守るシェルターの役割を果たすとともに、街並みや地域コミュニティーを形成する社会的資産である。
そこで、良質な住宅の蓄積に向けて効果的な支援策を間断なく講じていくよう、平成24年度の税制改正および予算編成に対して要望を取りまとめたものである。
具体的な要望として、まず、新築住宅にかかる固定資産税の減額措置については、昭和38年に法制化されて以降、長年にわたり大きな役割を果たしてきたことに鑑み、住宅購入者の負担軽減の観点から維持・恒久化すべきである。同特例が廃止された場合、生産波及効果がマイナス1.5兆円にも及ぶとの試算もある。
また、1400兆円の個人金融資産の半分を占める高齢者の金融資産を住宅投資に回し、世代間の所得移転を通じて、より多くの国民が住宅を取得できる仕組みづくりも重要である。住宅の一次取得層である30代の所得が減少傾向にあるなかで、住宅取得資金として親からの支援が行われるケースが多いことから、今年末で期限の切れる贈与税の特例措置および相続時精算課税の特例の維持・拡大が必要である。
一方、住宅の取得時においては、不動産取得税、登録免許税、印紙税、消費税など重層的な課税がなされていることから、消費税の見直しを含む税制抜本改革にあたっては、住宅の購入にかかる過重な税負担が住宅市場の縮小を招かない配慮が求められる。
その他、良質な住宅取得を促進するという観点から、投資減税をはじめとする長期優良住宅に対する特例措置や、住宅の買い換えに関する特例の延長も求めている。
住宅販売の現場でメリットがわかりやすいと大変好評で、特に高い政策効果を発揮しているのが、住宅エコポイント制度と住宅ローン「フラット35S」の金利引き下げ幅の拡大措置である。住宅市場を着実に回復軌道に乗せるとともに、質の高い住宅の普及を進めるため、両措置の拡充・継続が必要である。