経団連(米倉弘昌会長)は21日、東京・大手町の経団連会館で、東日本大震災からの復興に向けた日米協力のあり方などをめぐり、米国戦略国際問題研究所(CSIS)と意見交換を行った。CSISから、リチャード・アーミテージ元国務副長官、マイケル・グリーンCSIS上級顧問・日本部長ら14名が出席。経団連からは、米倉会長(震災復興特別委員会委員長)、岩沙弘道副会長(同共同委員長)、坂根正弘副会長(同共同委員長)ら15名が出席した。
あいさつする米倉会長 |
あいさつするアーミテージ元米国務副長官 |
冒頭、米倉会長は、震災後に米国から寄せられた義援金や救援物資、また、米軍による「トモダチ作戦」の展開などへの謝意を表明するとともに、現在の国難とも言える状況を乗り越えるべく、国を挙げた取り組みを進めていること、とりわけ、企業の現場では想定を上回るペースでサプライチェーン(部品の供給・調達網)の復旧が進んでいることを紹介した。
さらに、「わが国は内向きになることなく、世界経済との結びつきをさらに強めていかなければならない。EPA(経済連携協定)、FTA(自由貿易協定)などの経済連携の推進、TPP(環太平洋連携協定)交渉への早期参加が不可欠だ」と述べ、震災後もグローバル化に積極的に対応していくことの必要性を強調した。
続いて、アーミテージ元国務副長官からは、「米国はいち早く日本に対する全面的な支援に取り組んだが、これに際して何ら疑念は抱かなかった」と述べたうえで、今回の震災に際し、約150の国が支援を申し出た背景には、(1)国際社会が日本を必要としていること(2)日本経済の再生が世界経済にとって重要であること(3)中国の台頭に平和的に対応するためにも民主主義国家である日本の復活が不可欠であること――の3つの理由があるとの見解を示した。
その後、復旧・復興に向けた経済界の取り組みについて、岩沙副会長が説明を行い、早期の復旧・復興に向けた重要な点として、地域の特性を踏まえた住民主導のまちづくりの推進、PPP(Public Private Partnership、官民連携)など民間活力の一層の活用、高付加価値化を図った産業集積の促進、農林水産業・観光の再生・振興、大胆な規制改革の実施などを指摘した。加えて、福島第一原子力発電所での事故により日本製品への風評被害が発生していることを受け、米国側に対し、科学的根拠に基づいた冷静な対応を要望した。
また、グリーン上級顧問・日本部長は、「今回、経団連とパートナーシップを持つことができ、誇りに思う」「復旧・復興に向けた叡智を結集させるとともに、日米間のパートナーシップの強化に貢献したい」と述べ、日本の復興に向けて、CSISとしてもできる限りの協力を行っていく意向を表明した。
その後、日米関係のあり方や復興に向けた金融の役割、復興特区、また、日本の政治情勢などをテーマに意見交換を行った。CSISからは、「震災を機に日米関係が再評価されている。日米同盟はアジア全域における安全保障の基軸である」などの発言があった。
CSISでは、東日本大震災の発生を受け、4月に「復興と未来のための日米パートナーシップ」(委員長=ジェームズ・マクナーニ・ボーイング会長兼社長)を発足。今秋をめどに報告書を取りまとめる予定である。このほどパートナーシップの主要メンバーが来日し、今回の会合が開催されたものである。7月の経団連夏季フォーラム2011においても、再びグリーン上級顧問・日本部長が来日し、中間報告を行う予定となっている。