日本経団連タイムス No.3042 (2011年5月26日)

東日本大震災の教訓と防災・減災のあり方聞く

−海洋開発推進委員会総合部会


日本経団連は13日、東京・大手町の経団連会館で、海洋開発推進委員会総合部会(山脇康部会長)を開催した。当日は、海洋研究開発機構の堀田平理事、平朝彦理事、金田義行・地震津波・防災研究プロジェクトリーダーを招き、東日本大震災の教訓と防災・減災のあり方について説明を聞くとともに意見交換を行った。会合の概要は次のとおり。

■ 堀田理事のあいさつ

東日本大震災に関して2つの事業を進めている。1つ目の事業として、福島第一原子力発電所の放射性物質の海中への拡散を観測している。2つ目に、地震と津波の発生メカニズムと今後の防災に関する研究を行っている。

■ 金田プロジェクトリーダーの説明

海溝型地震はプレートの沈み込みにより起きる。日本は、太平洋プレート、北米プレート、フィリピン海プレート、ユーラシアプレートの4つのプレートに囲まれている。

東北地方太平洋沖地震では、宮城沖で北米プレートの先端部分が約50メートル沖合にせり出して、長さ500キロメートル以上、幅200キロメートル以上の大断層が生じた。その結果、大きな津波が起こり甚大な被害が生じた。津波は一部で38メートルに達して、世界中の太平洋沿岸にも広がった。

深海調査船「かいれい」がCTスキャンで調査したところ、フィリピン海プレートが北米プレートに沈み込んで破壊を止めたことがわかった。北米プレートは上方に7メートル隆起して、東南東に50メートルずれていた。

南海トラフでは、150〜200年でマグニチュード8クラスの地震が起きているため、東海、東南海、南海、日向灘も含めた4連動地震に備える必要がある。

海洋研究開発機構では、東南海地震の情報を詳細に検知できるトータル450キロメートルのケーブルを紀伊半島沖に敷設しており、地震計・水圧計などを用いた合計20カ所の観測点から構成される「DONET」という観測網の構築を進めている。

東日本大震災の教訓を活かさなければいけない。ほぼリアルタイムに津波の発生を伝えることができる津波ブイシステムの開発や、北海道から沖縄に至る津波監視システムの整備を進める。被害予測の高度化や、防災都市づくりにより、防災・減災に貢献したい。

■ 意見交換

意見交換では、「津波の第一報を聞いて緊急避難しても次の情報を聞く手段がない」という委員の意見に対し、金田プロジェクトリーダーが「DONETと衛星を組み合わせて津波警報を出せるようにすべきである」、平理事は「災害専用の通信衛星を打ち上げて、ワンセグで情報が得られるようにすべきである」とそれぞれ答えた。

【産業技術本部】
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