日本経団連の労働法規委員会労働安全衛生部会(三木眞部会長)は15日、東京・大手町の経団連会館で会合を開催し、慶應義塾大学の櫻井治彦名誉教授を招いて、「これからの安全衛生を展望する」と題する講演を聞いた。また厚生労働省労働基準局の木暮康二労災管理課長から、東日本大震災における労災保険認定の考え方について説明を聞いた。概要はそれぞれ次のとおり。
日本における労働衛生の変遷を振り返ると、最近まで有害業務による健康障害の防止への取り組みが中心的な課題とされ、努力に相応した成果が得られた。しかし、現在もなお、残された課題は少なくない。また、新しい問題も発生してきている。
例えば、各職場において、有害因子の種類が増加していることが挙げられる。使われている化学物質の種類は莫大であり、衛生面に影響のあるウイルスなどの生物因子も変化が激しい。今後、女性、高齢者、病気を持つ人など、有害因子に影響を受けやすい人々の職場への参入の増加が予測されるなかで、これらの有害因子は、時に重大な職業性疾患を引き起こす可能性がある。また現状でも、重篤でない健康障害が数多く見逃されていることが考えられる。
今後、企業にとって、このような状況に合理的に対処し、健康障害を未然に防止し安全と安心を確保するために、リスク評価を中核とするリスク管理を実施し、優先順位に基づいて必要な対策を確実に講じていくことが必須の課題である。ただし、その取り組みは、従業員の満足や士気を高めるものであることが重要となる。
今回の東日本大震災では、仕事中に、地震や津波により建物が倒壊するなどして被災した場合、業務災害として、労災保険給付の対象となる。また、被災労働者やその遺族にとって給付請求に困難が伴うことが予想されるので、次のとおり弾力的な措置を実施した。