日本経団連は17日、東京・大手町の経団連会館で、宇宙開発利用推進委員会企画部会(栗原昇部会長)・宇宙利用部会(西村知典部会長)合同会合を開催した。当日は、東京大学空間情報科学研究センターの柴崎亮介教授から、わが国の衛星測位システムのあり方について説明を聞くとともに意見交換を行った。概要は次のとおり。
2010年代中ごろから後半に向けて、各国の衛星測位システムのサービスが始まる。世界を対象とするシステムとして、米国ではGPS( Global Positioning System、全地球測位システム)の近代化計画が進行中で、その他の国・地域でも、EUのガリレオ、ロシアのグロナス、中国の北斗といった測位衛星の打ち上げが進んでいる。特定の地域を対象とするシステムとしては、日本の準天頂衛星やインドのIRNSS( Indian Regional Navigational Satellite System )がある。
地上や宇宙からのリアルタイムの測位と電子地図を合わせたサービスの実現に向け、2007年5月に地理空間情報活用推進基本法が成立した。
車両や道路インフラからの情報と衛星測位の情報を組み合わせ、ITS( Intelligent Transport Systems、高度道路交通システム)による安全運転ができるようになる。
準天頂衛星はGPSを補完して測位可能な場所を増加させ、測位効率を向上させるとともに、測位精度を10倍程度高める。
現在、私が座長を務める政府の準天頂衛星開発利用検討ワーキンググループでは、国際標準化を進め、新しいサービスを生み出して先行者利得をつくるとともに、観測も含めた宇宙技術システムの確立や、地上システムとの連携によるさまざまな社会サービスへの貢献を検討している。
「高精度測位システムを海外展開することによって、先取りできるメリットは何か」という委員からの質問に対して、柴崎教授は、「人の動きを観測して大量のデータを集め、リアルタイムで防災や交通に関する情報サービスを提供することがビジネスのフロンティアであると思う」と答えた。