第3回グローバル法務戦略セミナーで 講演する江口氏 |
日本経団連事業サービスは日本経団連と連携して2月28日、東京・大手町の経団連会館で、「グローバル法務戦略セミナー」(第3回)を開催した。同セミナーは、森・濱田松本法律事務所の協力の下に実施しており、今回はベトナムのジョイントベンチャーとM&Aをテーマに取り上げた。
講師の江口拓哉弁護士の説明は次のとおり。
ベトナムは大陸法型の法制度を採用しているが、企業法および土地制度をはじめ、同じ社会主義国家である中国法の影響を強く受けている。また、行政が広範な裁量権を持つ一方で、中央政府と地方政府の間、中央政府内の各行政機関の間は必ずしも連携が取れていないため、法令や通達の執行状況等について、その都度政府当局への確認が必要である。
直接投資に際しては、「投資法」「投資法実施細則」「WTO加盟議定書」の規定の確認が重要となる。まず、外国直接投資は厳格に規制されており、外国企業が現地子会社を設立する際には、政府の許認可が求められる。業種により、禁止・制限されることもあり、例えば国防、治安および公共利益に損害を与える事業は許可されない。また、サービス業については、WTO加盟議定書に基づく規制緩和のロードマップを確認する必要がある。
子会社の設立形式には、有限責任会社(100%外資会社・合弁会社)と株式会社の2つの形式がある。合弁会社を選択する場合、有限責任会社共通の留意点である、社員総会の決議要件や反対出資者の買戻請求権等に加え、次の4点への配慮が求められる。
外国子会社には一般的な卸売販売権が与えられないため、当該ライセンスを持つベトナム企業を買収しても、既存の事業を継続できないリスクがあるなど、許認可の問題には留意が必要である。また、内資閉鎖会社の株式取得の制限は撤廃されたが、上場会社株式の取得には49%の上限が設定されている。 M&Aを実施する際には、工場敷地および建物の安定的利用の可否など、典型的な問題点を押さえた法務デューデリジェンス(事前調査)を行うとともに、そのストラクチャリングについて、十分に検討する必要がある。