日本経団連は4日、東京・大手町の経団連会館で、宇宙開発利用推進委員会企画部会(栗原昇部会長)・宇宙利用部会(西村知典部会長)合同会合を開催した。当日は、内閣官房宇宙開発戦略本部事務局の片瀬裕文内閣審議官から、宇宙政策の現状について説明を聞くとともに意見交換を行った。概要は次のとおり。
2008年8月に施行された宇宙基本法の基本理念には、宇宙の平和的利用、宇宙開発利用推進のための研究開発、宇宙産業振興の3点がある。
09年6月に決定された宇宙基本計画では、利用を重視するとともに安全保障を正面から打ち出し、今後5年間で最大2.5兆円の資金が必要との試算を示した。2010年度は2ケタ増となったものの、11年度の宇宙関連予算は8%減の3099億円となった。
宇宙開発利用の推進を目的に設置された宇宙開発戦略本部においては、専門調査会で宇宙政策、準天頂衛星(日本版GPS)の事業計画、リモートセンシング(宇宙からの観測)政策の検討を進めており、7月に提言をまとめる。
宇宙産業の国際競争が激化しており、中国、インド等の新興国が伸びている。米国では、オバマ大統領が宇宙政策で輸出管理規制の緩和を打ち出した。わが国では、財政的制約があるなかで、予算の使い方を最大限に効率化して、宇宙開発利用の具体的イメージを出すことが大事である。企業の活力を引き出す政策手法の多様化や国際連携の方策も検討する。
そこで、輸送システム、リモートセンシング、衛星測位、衛星通信、探査・科学・技術・有人の5つのセクターに分け、10年程度を見越した実用化や、20〜30年後を想定した技術について考え方を整理する。
政府の宇宙開発利用体制も検討している。衛星測位やリモートセンシングは利用省庁が複数あるので、機動的な体制を検討する。総合調整機能の強化については、宇宙開発戦略本部や宇宙開発担当大臣による政府全体の宇宙予算の編成への関与の強化について議論する。
専門調査会では、宇宙開発利用や宇宙産業の将来を決める重要な議論を進めているので、産業界からも提言してほしい。
「『科学技術イノベーション戦略本部』(仮称)を設置して宇宙政策や海洋政策も担わせることが議論されているが、科学技術行政では進められないのではないか」との質問に対し、片瀬審議官は、「宇宙は安全保障、外交、国際競争、産業化に関わり、海洋は海洋権益の問題があるため、科学技術ですべてを束ねるのは無理と考えている」と答えた。