日本経団連タイムス No.3030 (2011年2月10日)

債券市場整備のニーズやインフラ整備のあり方提示

−アジア債券市場整備と域内金融協力に関する研究会の河合研究主幹が研究会報告を説明
/国際協力委員会・アジア・大洋州地域委員会


日本経団連の国際協力委員会(槍田松瑩委員長、矢野薫共同委員長)、アジア・大洋州地域委員会(川村隆委員長、宮内義彦共同委員長)は1月28日、東京・大手町の経団連会館で、21世紀政策研究所「アジア債券市場整備と域内金融協力に関する研究会」の研究主幹である、河合正弘・アジア開発銀行研究所所長を招いて合同会合を開催した。河合研究主幹は、同研究会が取りまとめを行っている研究報告の概要を説明した。

同研究会は、昨年3月に経団連が主催した、アジア・ビジネス・サミットの共同声明「域内での債券・株式の発行・流通市場の整備に向けて、民間が決済システム、保証機関、格付け機関、関連法制度等の必要なインフラ整備のあり方を研究する」を受けて、昨年6月に発足。アジア債券市場整備に関わる専門家を集め、投資家・発行体双方からの債券市場整備のニーズやインフラ整備のあり方を研究してきた。

報告の要点は次のとおり。

◇◇◇

アジア新興国のインフラ整備や、地場や現地に進出する企業の現地通貨建て資金への需要拡大等により、資金調達のためのアジア債券市場整備の重要性が高まっている。

今後は、域内市場のインフラ整備を通じて、債券発行の活性化を進めることが重要である。そのためには、公的な信用保証機能を活用した商品開発、地場企業に知見を有するアジア格付け機関(ACRA)の設立等に民間が主体的に取り組むとともに、官民連携での社債ファンドの設立やMTN(注)ルールの統一等を進めるべきである。

これらを実現するためには、東京市場の国際競争力の向上が重要である。また、域内の金融協力(アジア債券市場育成イニシアティブ、ABMI)を推進することも重要であり、財務省、証券市場を担当する金融庁、決済に関わる日銀が連携して戦略を策定することが求められる。

なお、同研究報告は、4月に開催予定の第2回アジア・ビジネス・サミットに提出される予定である。

■ 意見交換

意見交換では出席者から、「アジアの市場には売掛債権等の証券化商品が少ない。この流通を推進するには、アジア各国の信託法や破産法の整備が重要である」との指摘があった。

これに対して、河合氏は、「輸出志向から現地市場志向の企業の進出が増えれば、現地通貨需要も増え、証券化商品の需要も広がり、関連法規整備も行われるだろう」と説明した。

(注)社債発行により資金調達を予定している発行体が、ディーラー数社と基本契約をしておき、起債関係人との関係を包括的に定めておくことにより、発行限度枠内で随時発行される債券
【国際協力本部】
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