日本経団連タイムス No.2977 (2009年12月3日)

小沢環境相迎え地球温暖化政策で論議

−21世紀政策研究所が第65回シンポジウム


小沢環境相(左)と村尾キャスター

日本経団連の21世紀政策研究所(御手洗冨士夫会長、宮原賢次理事長)は11月25日、東京・大手町の経団連会館で第65回シンポジウム「地球温暖化政策の新局面〜ポスト京都議定書の行方」を開催した。同研究所では2007年以降、研究主幹に澤昭裕氏を迎え、ポスト京都議定書の国際枠組みのあり方についてさまざまな報告書を発表するとともにシンポジウムや討論会などで広く議論を提起している。

御手洗会長が冒頭の開会あいさつで、「地球温暖化は人類が長期にわたって取り組んでいかねばならない課題である」として「今後とも地球温暖化防止に向けて技術で世界をリードしていく」と述べたのに続き、小沢鋭仁環境大臣に対して「COP15(気候変動枠組条約第15回締約国会議)では米国、中国などの主要排出国が責任あるかたちで参加しない国際枠組みにはわが国も参加しない、という決然たる態度で国際交渉に臨んでほしい」と要請した。

小沢大臣は講演で「地球を守る活動により国民生活はさらに快適、安心、安全になる。そのための25%削減」であり、「温暖化の問題をコストと考えるのではなくチャンスと考えるべき」と述べた。また、COP15については「何らかの政治合意が出来るのは間違いないが、問題はその内容」と指摘し、中国、インドの対応を注視し、米国の削減目標レベルの妥当性にも目配りする必要性に触れた。さらに地球温暖化対策税、排出量取引について導入に向けての積極的な考えを披露し、「具体的な内容については経済界からも意見やアイデアを遠慮なく出してほしい」と要請した。

講演に続く大臣と村尾信尚キャスターとのトークでは、村尾キャスターから「コストをチャンスと考えろ、といった精神論、特攻論ではなく、どのように25%削減を達成するのか数値・データで示すべき」との指摘があった。また、ポスト京都議定書の枠組みに関する質問に対し、大臣が「アメリカと中国が入らない今の京都議定書の延長は絶対にやらない。日本だけが損をする枠組みにはならないようにする」と力強く断言する場面もあった。

大臣退席後、澤研究主幹が新たにまとめた報告書「地球温暖化問題における新たな政策課題〜1990年比25%削減構想の検証と実質的削減に向けた新提案」の内容について講演した。このなかで、澤主幹は25%削減による産業への影響に関するモデル計算の結果を示すとともに、地球温暖化を防ぐには技術的な裏付けのない削減目標の数値競争ではなく、先進国と途上国が具体的な協力モデルを構築して温室効果ガスを実質的に削減することの重要性を訴えた。その一例として、まずは日本・米国・中国の三カ国が「地球温暖化防止相互協力のための行政協定」を締結して、日米が中国に対して資金・技術で支援を行い、それによって温室効果ガスを削減した成果を三カ国限定のクレジットとして認定し、国連の枠組みを補完しつつ実質的に削減するアイデアを提示した。

最後のパネル討論では、環境ジャーナリストの枝廣淳子氏から「温暖化対策のコストが強調されるが、化石燃料の可採埋蔵量はいずれピークを越えて、価格が上昇する。それなら今から国内の再生可能エネルギーに投資すべき。それは将来への備えであって損失ではない」との指摘がなされた。日本経団連環境安全委員会の坂根正弘委員長は、「CO2の発生を生産時点だけで見るのではなく、その製品が使用されることで消費サイドでもどれだけ削減に貢献したかを見るべき」というライフ・サイクル・アセスメントの考えを示した。また、「二大排出国の米国・中国が削減義務を負わない京都議定書の二の舞になってはならない」と強調した。

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