日本経団連は10月30日、大阪市内で「関西企業倫理セミナー」を開催した。日本経団連では毎年10月を「企業倫理月間」と定め、会員各社が企業倫理の確立に向けて具体的に取り組むよう呼びかけており、その一環として、20日の「企業倫理トップセミナー」(10月29日号既報)に続いて開催されたもの。関西地区の会員企業トップや役員の参加を得て、企業倫理の実践、CSR推進に向けた取り組みの重要性について改めて確認した。
吉田部会長
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冒頭あいさつに立った企業行動委員会企画部会長の吉田豊次氏は、「事業活動全般、すなわち、取引・契約内容や消費者・顧客対応と顧客情報管理、品質管理、従業員の安全確保・衛生管理、周辺地域の安全確保といった点に対する総点検を通じて企業倫理の浸透状況を把握することは、違法行為などの不祥事の芽を早期に摘み取ることにつながる。また、企業倫理に取り組むための体制整備が進展するなか、経営トップのリーダーシップのもとで、企業倫理の徹底に向け、いかに具体的で実効ある取り組みができるかが問われている。本日は、責任ある企業行動の確立に向けた実効ある取り組みについて、皆さま方と一緒に考える機会にしたい」と述べた。
國廣弁護士
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続いて国広総合法律事務所弁護士の國廣正氏が「企業倫理の実践とトップの役割‐不祥事防止と企業価値向上のために」と題し講演を行った。このなかで、國廣弁護士は「企業の社会的責任とは、単なる法的責任にとどまらず、社会からの要請を踏まえて取るべき企業行動であり、社会に対するコミットメント、約束である。仮に法的責任がない場合であっても、その約束に反する行動を取れば、企業のクライシスを最大化し、存亡の危機になることもあり得る。企業倫理とは、企業が生き延びるためのリスク管理論でもある。リスクの予防と同様に重要なのは、何か起きたときにどう対応するかという点であり、隠蔽と見なされる行為は致命傷となる」と述べた。さらに「最近起きた一連の偽装問題をみて、企業の担当者が品質や表示に関わるすべての法律に対応しなければならないと考えているとすれば、それは誤解である。共通しているのは、消費者に偽りを述べたことに対する社会の怒りであり、必ずしも安全性の面だけの問題ではない。不正会計事件は、有価証券報告書に嘘の記載をし、投資家を騙そうとしたことが問題である。企業倫理実践の基本は極めてシンプルである。すなわち、『騙すな』ということだ。社会は、誠実な企業でなければ自由競争市場への参加資格はないと考えている」と述べた。加えて「リスクはゼロにはならない。リスクがあることを認め、どんな間違いも『あってはならない』という考えを捨てることで、隠蔽を防ぐことが重要である。また経営トップは、不正は許容しないという強いメッセージを発信することが重要である」と強調した。
鍛治舍部会長
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さらに、企業行動委員会社会的責任経営部会長の鍛治舍巧氏が、「日本経団連におけるCSR推進に向けた取り組み」と題して活動報告を行った。鍛治舍部会長はまず、自らが取りまとめにあたり、9月に公表した
「CSRに関するアンケート調査結果」(
9月17日号既報)の概要を説明した後、ISO26000(社会的責任に関する手引き)の開発状況について紹介した。最後に今年3月、御手洗会長や内閣総理大臣が発起人となり、事業者、消費者、労働組合、金融、NPO・NGO、行政の代表が参加する「安全・安心で持続可能な未来に向けた社会的責任に関する円卓会議」の動向について説明したうえで、社会的責任経営部会では引き続きCSRの推進に積極的に取り組んでいくとの意向を示し、会員企業への積極的な参加と協力を求めた。