日本経団連の社会保障委員会医療改革部会(齊藤正憲部会長)は10月9日、東京・大手町の経団連会館で会合を開催し、広島県健康福祉局の迫井正深局長から、広島県における地域医療提供体制の現状と地域医療の充実に向けた取り組みについて説明を聞き、意見交換を行った。
広島県は人口当たり医学部定員数が全国で5番目に少なく、無医地区の多さでは全国2位である。しかし、地域医療連携体制で補うことで、周産期死亡率は全国最低レベルである。地域連携を進めるうえで、まず乳がんを取り上げた。検診・治療等の施設群ごとに施設・技術等の医療水準を設定し、「広島乳がん医療ネットワーク」への参加を呼びかけ、医療機関に自ら手を挙げてもらうシステムをつくり上げた。いずれはすべてのがんに対応したいと考えている。
療養病床再編については、地域ケア体制の整備を前面に掲げ、医療療養病床を持つ医療機関の老人保健施設への転換意向の有無を重視したうえで、市町の介護保険事業計画との調整を行った。この結果、合意形成がスムーズに行われ、実効性が高く、入院患者の医療や介護の必要度に応じた受け皿確保の見通しがついた。今後は、地域住民自らが参加し、民間団体等も含め、地域全体で地域ケアに取り組む仕組みを都道府県が中心となってつくっていくことが重要である。
さらに、救急医療体制の充実に向けて、タッチパネルと携帯電話を用いた救急搬送支援システムを導入し、受け入れを即決できる各医療機関の責任者が連絡を取る環境を整備して、より迅速な対応を可能とした。
こうした取り組みを進めるにあたり、1969年に設立された、医師会・大学・行政が三者協議を行う県レベルの「地域保健対策協議会(地対協)」が重要な政策協議の場となっている。全県の「地対協」に加えて、二次医療圏ごとの「圏域地対協」とも連携し、地域特性や現場のニーズに即した実効性のある活動を行っている。
引き続き行われた意見交換では、「地域医療の充実に向けて企業に取り組んでほしいことはあるか」との質問に対し、「がん対策に有効な検診への参加を呼びかけることを期待している」との回答があった。また、「各県で競い合ってよい医療提供体制を目指してはどうか」との問いに対しては、「各種データを使い説明し、医療関係者が納得したうえで取り組んでもらうことが重要である」との見解が示された。